シネつう!
JAPAN STYLE !!

交響詩篇エウレカセブン
ハイエボリューション1
2017年制作

満足度:

2005年に放送されたTVアニメシリーズを設定を再構成して描く劇場版3部作の1作目。
スカブコーラルと人類の最終決戦“サマー・オブ・ラブ”から10年後。
英雄アドロックの息子レントンは鬱屈した日常から抜け出すために家出をした。

作品としてはオープニングのネクロシス作戦(サマー・オブ・ラブ)の一大決戦の顛末と、10年後のレントンの出会いと別れを描いた本編の2部構成といった感じ。
新作パートのサマー・オブ・ラブは凄まじい物量とスピード感で「まさに劇場クオリティ!」と見応えはあるのだが、敵味方の設定について説明が非常に淡泊なので、TV版を観ていることが前提になっていると思う。
いや、仮に初見だとすれば…次々に登場してくる若き日のキャラクターたちが後々に伏線としても機能するのかもしれないが…。
この1作だけで考えるとそれ以降出てこない人物もいるので、やはりTV版を知っている観客が知ったキャラを懐かしみながら、ついにTVではハッキリと描かれなかったサマー・オブ・ラブの事を目撃して喜ぶ…という要素の方が大きい気がする。

さて、主人公レントンの回想がメインとなる本編。
TV版とは設定が微妙に違い、レントンがチャールズ・ビームスとレイ・ビームスの養子ということになっている。
そもそもこの本編はレントンのこの1カ月の事を振り返る形にして見せる演出にしているが、これをTV版からの映像の流用としたことでTV版視聴者の俺としては少々混乱してしまった。
いや、養子であることは良い。
疑似家族化したレントンとビームス夫妻の物語も、元々のTV版からとてもいい話だったと思うし。
でも9年前から養子だったとなると、なんでこの最後の1週間だけこんなにビームス夫妻の愛情が濃いのかよく分からない。
チャールズの性格でこの9年間レントンがあの状況だったことを良しとするのだろうか。

レントンが自分の人生を自分で決める重要なきっかけを与えるチャールズとレイとの関係を中心に、レントンの成長を1作で見せ切りたいという作り手の意図は見えるものの、やはりTV版の映像の流用が足かせなんじゃないだろうか。
月光号での扱いの悪さと白鳥号での優しさの対比も、エウレカとの運命の出会いと逃避も、そこまでの積み重ねがないとチャールズ夫妻との別れの決心に結びつかない。
なのに肝心の月光号との出会いや扱いはこの映画で端折ってしまっているので、TV版の記憶を頼りに補完してしまうと混乱に拍車が…。
考えすぎなんだろうか。

正直言うと元々のTV版放送当時、視聴した個人的な印象は「エヴァンゲリオンとマクロスを足して二で割って、聖書の代わりに仏教的な何かを混ぜた感じ」だった。
チャールズとレイが「機動戦士ガンダム」のラルとハモンにダブって見えるのも周知の事実。
その印象は構成が若干変わった本作でも変わらないが、そういうオマージュもこの作品の個性なのだろうと受け入れてはいる。
しかし本作で序盤から次々に畳み込まれる説明テロップの数にはさすがに辟易した。
エヴァどころかシン・ゴジラの劣化コピー…言い過ぎ?
「シン・ゴジラ」自体は岡本喜八作品へのオマージュだが、本作は過剰すぎて正直画面がうるさいです。
回想内での「PLAY BACK」もくどいし…。
「エウレカセブン」を観ると、皮肉にも庵野秀明のオマージュセンスの良さを改めて認識する。
それは12年経って作られた「エウレカ」の新作でも変わらないんだなあ…と本作を観て思ったのでした。

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