シネつう!
JAPAN STYLE !!

ガメラ3
邪神<イリス>覚醒
1999年制作

満足度:

平成ガメラ3部作完結編。
世界中でギャオスの活動が活発化するなか、ギャオスを攻撃するガメラによる被害も発生する。
一方、4年前の東京でガメラに両親を殺された少女が、引き取り先の奈良で封印された謎の卵を発見するが…。

SF的な要素が強かった「2」とは少し毛色が変わって、世界観的には終末思想やガイア理論を強化した少々オカルトっぽい方向にに振っている感じ。
1999年という世紀末も目前という空気を考えればそういう振り方も理解はできるけど、それよりも「『2』と違うアプローチをしよう」という作り手の意地も感じる部分ではあるか。
とはいえ、色んな要素を取り込もうとしたことで良い意味で濃くそして悪い意味で雑多な印象もあるけれど。

前田愛が演じる主人公の少女は怪獣に肉親を殺された人々の代表みたいな立ち位置だけど、リリスに魅入られて育てていく過程はややご都合的な感じも受ける感じ。
そういうところの行動によって微妙に感情移入できない部分もあったし、独りよがりな(ように見えてしまう)キャラクター的にあまり魅力は感じないというのが正直なところ。
まあ彼女にとってそれだけガメラに対しての恨みが強く境遇的にも他に心を開けないということなんだろうが、話を進めるための設定は目につくかな。
むしろ大迫元警部補や斉藤審議官といった「1」から登場していた脇役の方に魅力的なキャラがいて、そちらの方が観ていて楽しい。
脇役といえば、今から考えると本作はちょい役で出てくる人が色々と豪華だよね。
仲間由紀恵のミイラ化は、役者の名前が大きくなりすぎて今じゃ完全にギャグ扱いだけど、一応あれはホラー描写のはずなんだよな。
まあそいう部分も楽しめる部分ではあるがw

一方で新キャラでは山咲千里演じる巫女と手塚とおる演じるゲーム作家が登場。
(出てくるゲーム機がドリームキャストってところに時代を感じるw)
意図的なんだろうけどもキャラづけに関してはどちらも怪しさ満点で、彼らがいないとそれはそれでストーリーは進まないものの…オカルト要素の説明役って感じが強すぎなところはちょっと浮き気味な印象もあった。

テーマとしては、「ガメラとは何か」についての結論と、怪獣の足下で死んでいく人々という“被害”の2本立てになっていて、後者については特に序盤の渋谷大破壊のシーンが素晴らしいな。
ガメラはギャオスを倒すことを目的に暴れまわっているわけで、人を攻撃しているわけじゃない。
でもそれによってどれだけの被害があるのかをとことん見せつけて、観客のガメラに対する気持ちにも揺さぶりをかけてくる。
人々がガメラの炎に吹き飛ばされる様は「インデペンデンス・デイ」の影響も受けていそうだけど、ビジュアル的な効果は抜群だった。
怪獣の巨大感を強調するあおりのカメラワークも冴えわたり、特撮怪獣の描写としてある意味で頂点に達したシーンだよなあ。

そもそもガメラはゴジラと違って空を飛べるので、突然現れて突然暴れまわるという事ができるわけだ。
人間にとって逃げる猶予時間がゴジラのそれとは圧倒的に違うわけで、それによって被害が大きくなるという設定上の起こりうる差をはっきりと描いている部分が、ゴジラとはまた異なる怪獣としての魅力を差別化して描くことに成功していると感じる。

映画のラスト。
京都駅での決戦を経てイリスを倒した満身創痍のガメラは、数で圧倒されることが目に見えていてもなお日本に襲い来るギャオスに立ち向かうため独り燃える京都の中を進む…。
「ガメラとは何か」という命題に対しての、地球の守護者の姿を見せつけるこの最後の姿。
あえて決着を描かないこの余韻がたまらない…。

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