シネつう!
JAPAN STYLE !!

機動戦士ガンダムU
哀・戦士編
1981年制作

満足度:

1979年から1980年にかけて放送されたTVアニメ「機動戦士ガンダム」の、第16話から第31話前半を再構成した総集編の第2作。

この第2作を通じてアムロは様々な人の死に触れる。
もちろん1作目でも戦闘ではモビルスーツを撃破しているわけだけど、顔の見えない相手とは違って“顔見知りの死”の影響は大きい。
ランバ・ラルの自決、マチルダの戦死、そしてハモンの復讐戦と戦友リュウ・ホセイの特攻。
それらの戦争の現実によってアムロは精神的な成長を余儀なくされるわけだけど、そのあたりの立て続けの出来事がジャブのように効いてくる構成はなかなか過酷。
"哀・戦士"とはアムロだけのことではなくそうして散っていった人々のことも指してのものだろうが、なかなかよく出来た副題だとも思う。

連邦対ジオンという図式の中で主人公サイドの連邦が完全に正義なのか分からないというのも「ガンダム」という世界観の魅力だけど、本作のランバ・ラルはそういう意味で敵方でありながらジオン=悪玉という概念をゆるがせる大人の度量を持ったキャラクターとして、とても素晴らしいキャラクターだね。
対して連邦の大人は…、まあブライトさんは立場の中で苦労している人だし視聴者もそれは分かって観ることになるのだけど、さらに上層部となるとアムロ達からすれば理不尽な存在でしかない。
リュウの三階級特進を聞いて「普段は何も支援もしてくれないのに、三階級特進ってそれだけですか! ありがとうの一言くらい!」と上官に詰め寄るアムロの姿には、そんな気持ちが集約されているのがよく伝わる。
それらに地球侵略に来た宇宙人と戦う様な勧善懲悪の物語とは違うリアルさというか、人間と人間の戦争という正義のあいまいな概念が運命を左右していくという不条理さとでもいうか、大人の目線で観た時にも何か惹きつける空気になっているのではないかな感じる。

本作で言えばカイとミハルのエピソードは戦争の不条理を色濃く反映した名エピソードだけど、言ってみればサブキャラクターの物語にも関わらずほぼ丸々残して話として入れているところからも、本作にとってアムロの成長と同じくらい“戦争”という状況が大きなテーマだというのがよく分かるね。
お調子者で、けして良くは見えなかったカイの人間的な深みを描いたという点でも印象深いけれど、ミハルが散るその瞬間は自分の中でもシリーズ中で最も印象に残っているシーンかもしれない。
ガンダムの魅力とは、主人公が全てではなく脇役にも人生があり、そして敵方にも生き様があるということを感じさせてくれる点なのかなと考えさせられる。

もどる(カ行)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01