TVアニメ「けいおん！」の劇場版。
ロンドンへの卒業旅行の出来事を中心に、卒業直前の軽音部メンバーの姿を描く。

TVの方は女子高生の活動をゆるく描いた作風が魅力の日常アニメだったけれど、映画になってもその作風は変わらず。
登場人物たちの日常の延長にロンドンへの卒業旅行があり、そこでもいつも通りのメンバーたちのやり取りといった日常がある。
とりとめのない会話のやり取りで過ぎていく時間の流れが、いかにも「けいおん！」らしくていいね。

映画だからと大げさな話や展開にならなかったのは非常に好感が持てた。
観光映画にもなってなかったしのも良しｗ
制作陣は観客がこの作品世界に何を求めているのかよく理解していると思う。
でも背景はひたすら実景に近い精細な書き込みで、カメラのパンにすらもこだわりが見えたねえ。

ロンドン旅行の話と並行して、卒業する４人のメンバーが１人残る後輩のために贈る歌を考える、という話も描かれる。
前半はこれをギャグ（バレるかバレないか）への伏線として使いつつ、後半にはしっかりまとめて後輩への想いを込めた歌として歌われるけど、その過程で作詞に悩む主人公の姿を描くことで、“歌に込めるものとは何か”というテーマが固まって作品としても完成度を上げているのではないか。
もちろんそこにはTVから通じて描かれたメンバーの日常が積み重なってこそのラストだけど、それでもこの映画内ですら旅行に行くまでにかなり長い時間を部室描写にかけていることからも、そのクライマックスへ至る積み重ねにはこだわりを感じるところです。

元々のTV版からして、女子高生の日常描写という点ではこの作品で描かれる世界はファンタジーなんだろうが、そのユートピア性については見ていて安心できるものがあるんだよね。
そして劇場版でもそのテンションを貫いた演出は正解だったし、青春映画としても気持ちのいい終わり方だったと思う。

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