シネつう!
JAPAN STYLE !!

甲子園
フィールド・オブ・ドリームス
2020年制作

満足度:

日本の高校野球という文化を、神奈川県の横浜隼人高校を中心に描いた国際共同制作のドキュメンタリー作品。

横浜隼人高校の水谷監督を軸に構成されたような内容で観やすい。
「観やすい」というのは、一般に「高校野球」と聞いてイメージする“監督と球児”や“体育会系的な文化”の中での仲間や人間関係のそれが端的に伝わってくるからだろう。
「甲子園に出場する」という夢に青春をかける若者、彼らと同じように甲子園に対して想いを抱き指導する監督、そしてそこにドラマを求める観客。
その3つによって構成されるのが日本の独特な「高校野球観」だと思えば、本作は分かりやすく構成されていたし、うまく表現されているとも思った。

本作はドキュメンタリーとしての密着取材なので、撮影している間はその学校が甲子園に出場できるかどうかは分からない。
2006年に米国のドキュメンタリーで「高校野球 HIGH SCHOOL BASEBALL」という作品があって、その作品では取材先の2校が2校とも予選敗退だったけど、本作で結果的に予選敗退した横浜隼人高校の姿を観た時にふとその2006年の作品のことを思い出した。
甲子園に出場することは難しい。
優勝することはもっと難しい。
難しいからこそ、観る側は“目指す過程”といったスポコン的な部分に「高校野球」のドラマを感じるのだろう。
そういう勝手なイメージがある。

極端な言い方をすれば、この映画は自分が「高校野球」からイメージするそういうものに対して何ら逸脱していないので、これを観て何か新しい発見があるかというと…そういうわけでもない。
けど逆に言えば、本作こそ「日本人が高校野球に求めるもの」の表現型なのだと考えれば、正しい内容のようにも思える。
少なくとも、本作に「海外に日本の高校野球文化を紹介する」という性格があるならば、本作の感受性そのものが「高校野球文化」のそれだ。

そういう世界を描くときに、本作の軸に据えた水谷監督は作品の動輪として良いキャラクターだったな。
「野球はボールが点になるんじゃなくて人が点になるんだ、だから人を育てなきゃいかん」という監督の話は印象に残るし、人柄が伝わってくる練習中の撮り方も上手いと思う。
花巻東の佐々木監督との関係を絡めることで「人のつながり」を感じさせる構成も悪くない。
一方で、花巻東に絡めて何度も菊池雄星や大谷翔平の名前が出てくるのはちょっとしつこさは感じた。
本作が米国で売り込むことを志向した作品だから、というのは分からなくもないが。


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