シネつう!
JAPAN STYLE !!

機動警察パトレイバー
劇場版
1989年制作

満足度:

OVAからTVシリーズや連載漫画にメディアミックス化されたロボットアニメの劇場版。
近未来の東京で土木作業用に開発されたレイバーの暴走事故が多発。
レイバー犯罪に対応するために設立された警視庁特車二課はその真相に迫っていくが…。

近未来の東京…とは言っても公開された1989年から見た近未来、1999年の東京が舞台。
この映画がSFとして面白いのは2つの設定が上手く取り入れらている点だと思う。
ひとつは、現実では東京湾アクアラインがまだ計画だった時代に、川崎〜木更津間の大突堤・干拓事業「バビロンプロジェクト」として作中の設定を取り入れていること。
もうひとつは、一般にはOSなどという言葉が普及する前(Windows 3.1が発売されたのはこの3年後)に、ハードとソフトの観点からマルウェア(劇中ではウィルスとしてしか呼ばれないが)の脅威をサスペンスとして取り入れているということ。

元々このシリーズは、島流し同然の埋め立て地で繰り広げられる学園モノの延長の様な警察コメディ…とでもいうようなロボットアニメだったけれど。
そこに上記の2つの要素をうまく混ぜ込んで、「ただのロボットアニメ」という以上の重厚なSFアニメになっていると思う。
もちろん二課の面々のドタバタ風味もちゃんと入ってシリーズらしさを残しつつ、その上で押井守の趣味性もエンターテイメントの枠の中でギリギリ生かされているのが面白い。
この辺は脚本の伊藤和典がうまくコントロールしたって感じなのかな。

意味深な聖書からの引用や、旧東京と新東京の対比という都市論は、年齢を重ねてから見るとまた違った味わいを感じるところでもある。
特に移り行く東京というテーマなんて、初めてこの映画を観た学生の頃は何も感じなかったのに…。
今観ると、消えていった風景に対して不思議な気持ちがこみあげてくる。
それは年を食ったってことかもしれないけど、新しい街に上書きされる直前の世界がアニメの中で垣間見えるというのも不思議な感じだ。

映画の尺は100分程度。
その中で冒頭の事件から真相の調査、解決のための行動までテンポよく話が進む。
冒頭はOVAを観ていない人向けに世界観の説明台詞とかも入っているけど、入れ込み方はあまり違和感はないかな。
そういう意味では中盤にあるHOSの仕掛けといった技術的な話も、実際には説明台詞なのにあまりクサく感じないのが良いね。
ロボットアクションとしては序盤と終盤に偏っていて中盤とテンションがだいぶ違うのは、監督のダレ間理論的な部分もあるんだろう。
個人的にはダレているというよりは適切な積み重ねだと思うけど、でも帆場の足取りを調査しているシーンは劇判も含めて明らかにダレ間として描いている感じではあるか。
結局のところ劇中では帆場というキーマンには何も語らせない(というか死んでいるので語りようもない)のが興味深い。
登場人物は帆場の考えていたことを推測するしかないわけだけで、結果的には彼の死によって計画はすでに完成していたと説く後藤隊長の解釈が恐ろしくも納得できるところ。

そうそう、この映画の後藤隊長はほんとに格好いいよなあ。
本庁を向こうに回した立ち回りとか、上司として尊敬できる。
人の乗せ方とかも上手いし。
でも…篠原の姿を見てるとこの人の部下にはなりたくないとは思うけどねw


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