シネつう!
JAPAN STYLE !!

激動の昭和史
沖縄決戦
1971年制作

満足度:

太平洋戦争末期、日本本土への米軍の侵攻が迫る中で決戦に備える沖縄の帝国陸軍第32軍と、その沖縄戦の結末までを描いた戦争映画。

岡本喜八監督の戦争映画としては「日本のいちばん長い日」と同様のオールスターキャストによる重厚な戦史映画だけど、戦争における(日本側からのみの)マクロな視点とミクロな視点を両方取り込もうとしている分、ちょっと散漫な印象も。
ともすればエピソードの羅列でしかないし、場面が飛びまくるカット構成も割り切った感じがして物語としては微妙な感じがしなくもないが…、一気に沖縄戦の最初から最後までを2時間半で駆け抜ける内容は力強くはある。
脚本は新藤兼人。

序盤は大本営の方針に翻弄される第32軍が中心。
如何ともしがたい状況の中で長参謀長(丹波哲郎)と八原高級参謀(仲代達矢)が方針を決めたり止めたりしてる場面に、彼らの色々な苦悩が見て取れる。
この辺は彼ら名役者の独壇場だったかな。
そして民間人や徴用部隊、県知事・対馬丸・男子師範斬込隊・義烈空挺隊・ひめゆり部隊・神山島斬込隊・鉄血勤皇隊そしてなどのエピソードが加わっていくが、やはり総力戦の最後…自決による死屍累々の場面は、史実を知っていてもどうにもならなかったのかという無力さが虚しい。
亀甲墓の前で一心不乱に踊る老婆と、その目前に迫る戦車隊のカットが印象的。

正直言って砲撃されている場面などは爆発で誤魔化した時代を感じる安い感じもするし、前述のとおり散漫な印象もあるけれど、でも全体的に沖縄戦という戦場が生んだ結末を知るにはいい映画だと思うね。
その戦場を通して度々現れる彷徨う少女。
まああれはエピソードの羅列で出来たこの映画の縦糸としての、ある種の象徴ってところか。

しかし悲惨さばかりの強調ではなく、妙に冷めた軍医の態度にしても、妙に軽い劇判やユーモラスな女性キャラにしても、その辺の線引きがお涙ちょうだいだけに陥りがちなダメな反戦映画とは違うシニカルさを感じるところ。

もどる(カ行)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01