シネつう!
JAPAN STYLE !!

ゴジラ -1.0
2023年制作

満足度:

「ゴジラ」シリーズの33作目(実写映画では30作目)。
特攻隊員の主人公・敷島浩一。
故障と偽り不時着した大戸島の飛行場で彼は巨大な生物と遭遇し、その日に大戸島の守備隊は壊滅した。
終戦後、生き残った敷島は復員するが、ある日ひょんなことから子連れの女性・典子と暮らすことになる。

「俺が引き金を引かなかったから守備隊が全滅した」。
冒頭のこの出来事が主人公にとっての戦争の呪縛としてどこまでもついてくる。
この構造を生かしたストーリーが見事だった。

ゴジラは災害であり、戦争のメタファーでもある。
これは1954年に公開されたオリジナル作品の時点で完成したイメージであるし、その後の昭和シリーズでヒーロー化するなどして紆余曲折はしたものの、“ゴジラ”というキャラクターを語る上で外せないバックボーンでもある。
その意味で本作はオリジナルのイメージをすくい上げて最大限に活かしていたのが良かったと思う。
「これぞゴジラだ」と納得のできるその迫力と存在感は脱帽ですよ。

主人公にとっての呪縛が戦争であり、それが形になってやってきたものがゴジラであると、いうのがこの物語のテーマ。
そして彼にかけられた呪縛を解くものは、守備隊の生き残りである橘という存在だ。
青木崇高演じる橘に呪縛をかけられたからこそ、主人公は終盤でも「橘に整備してもらうこと」に固執していたわけだけど、第三者的には「大事の前でそんな個人的なこだわりを持つなよ…」という冷めた目線に陥りがち。
それでもそう感じさせなかったのは、主演の神木隆之介の熱演があってこそだろうか。
主人公ではあってもヒーロー感はない、どこか等身大の人物像が主人公に感情移入させてくれたよね。
浜辺美波演じる典子との疑似家族の雰囲気も良かったと思います。
主人公の仲間となる掃海艇の3人もそれぞれにキャラが立っていたし、出演陣が良かったなあ。

ゴジラ映画的にもオマージュはいっぱい。
有楽町で電車が襲われ、日劇は破壊され、実況中継のアナウンサーもしっかり登場。
このあたりも「ゴジラ映画といえば」のツボを押さえていたように思うね。
さすがに襲われる電車にピンポイントで典子が乗り合わせているのは「出来すぎだあ」とは思ったけれど、まあそこはいいか。
造形は、特に顔つきが「平成VSシリーズ」のそれをさらにブラッシュアップさせたような格好良さ。
個人的には「平成VSシリーズ」がドンピシャの世代なので、これはたまりませんよw

正直言うと終盤にもう一度地上戦や都市破壊があると良かったのだけど、ストーリー的には海上戦闘で終止してしまったのがちょっと残念かな。
それでも見ごたえはバッチリだったので良かったですが。
そうそう終盤といえば、主人公の搭乗機に局地戦闘機“震電”を出してきたところにはニヤニヤさせられてしまった。
史実ではついに日の目を見なかった試作機にこの様に活躍の場を与えるのだから、監督はロマンが分かってるなあw

兎にも角にも、「映画館で観るゴジラ」としては十分な満足感を与えてくれる作品でしたね。
「こうでなくっちゃ」という物が詰まっているのは強くてずるい。


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