シネつう!
JAPAN STYLE !!

海獣の子供
2019年制作

満足度:

五十嵐大介の同名漫画を原作にした劇場アニメ。
夏休みに入った中学生の少女・琉花は、ジュゴンに育てられたという少年・海とその兄・空に出会う。
一方、世界各地で海洋生物の不思議な行動が目立ち始めるが…。

原作漫画は未読。
作者の五十嵐大介の名を聞くまですっかり忘れていたが、前作の「魔女」は買って読んでいた。
なのでこの作者の“作風”という部分…、たとえばペン画の様な描線、密度の高い画面、自然と超常が併存するような世界観がこのアニメ映画からも共通の要素として感じ取れたのは面白い。
原作は5年間連載された長編作品で、この映画化にあたってはだいぶ内容を取捨選択した構成にしているらしいけど、前述のように感じ取らせることが出来ているということは、原作の持つ魅力を上手く映像作品として落とし込めているのだろうとも思う。

「五十嵐大介の絵を動かす」という点で、この映画はチャレンジをしているし成功もしていると思う。
手描き表現のキャラクターや動画と、写実的でありながら“絵”として描かれている背景美術、そしてCGで描かれた海の生き物の存在感と密度。
これらがマッチングした画面のクオリティーは最初から最後まで高くて感心したし、劇場映画として満足のいくものだったな。

内容は日常に問題を抱えた少女の少年たちとの出会いという、ボーイ・ミーツ・ガール(この場合は逆か)的な導入から始まるものの、場面が進むごとにどんどんと世界や命の観念が飛躍していって、終盤はもはやキューブリックのSF映画でも観ているかのような状態に。
ポカーンというか…いやはや話についていくのが大変だが(w)
さりとて完全にワケが分からないわけでもなく、主人公の目を通して世界(というか宇宙)の秘密を垣間見る不思議な体験をしたという感覚だけはしっかり残った。
「話は面白いのか」と聞かれると「よく分からん」と答えてしまいそうではあるが、作品が語る壮大な世界観には魅力を感じる。
どちらかと言うと観念的SF作品とでもいうような印象もあるのだけど、好き嫌いの別れそうな作品だなとも思った次第。

個人的にはこの映画を観て原作が気になったので、本を買って読んでみることにしたのです。


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