シネつう!
JAPAN STYLE !!

紙の月
2014年制作

満足度:

角田光代の同名小説の実写映画化作品。
銀行のパートタイマーでる主人公・梨花は、ふとしたきっかけで顧客の金に手を付けてしまう。
横領した金を大学生の愛人・光太との逢瀬に使い込む梨花だったが、ついに銀行にその横領が発覚する。

宮沢りえが演じる梨花の境遇が描かれる序盤。
基本的に映像や間でそれを表現し特段の説明台詞なんてものは使わないスタイルは、そのまま全編に貫かれ、鑑賞後の「あーこれは“映画”だな」という確信に至る。
ただ、個人的にはこの主人公に全然共感できないのだけどねw
それもあって終始客観的に観てしまったのだけど、演出面での抑制の効いた淡々とした雰囲気は、煽ればもっとサスペンスフルになりそうなこの題材を人間心理の劇として一つレベルを高めているようにも思う。

それはひとえに宮沢りえの演技があってこそだと思うが、それ以上にそれを引き立てる小林聡美の存在感が大きい。
終盤の銀行でのやり取りは、画面から確かな熱量が伝わってきて良いクライマックスになっているよね。
何かを贈ることで愛を得ようとする、その主人公の根本にある変わらぬ性質が交錯する演出には見入った。

いつか失われる"ニセモノ"を繋ぎ留めて自分の世界を保とうとする心理。
彼女にとって表裏一体の他愛と利己という複雑な面が興味深い。
彼女にとっての世界が崩壊したその先で、過去の他愛に意味があったと感じ取れるラストは、救いなのかどうなのか…。


もどる(カ行)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01