シネつう!
JAPAN STYLE !!

借りぐらしのアリエッティ
2010年制作

満足度:

床下の小人たちの姿を描いたメアリー・ノートンの児童文学を元に、舞台を日本に移したスタジオジブリのファンタジー作品。
監督は米林宏昌。
宮崎駿は丹羽圭子と共に脚本を担当。

舞台が日本なのに小人たちの文化が洋風であることに多少の違和感は覚えるが、元がイギリスの話だから仕方がないか。
まあ古い洋風家屋が舞台だし、ファンタジーだからと目の瞑れる範囲ではある。
でもその洋風感覚が、宮崎作品に似たテイストの背景美術を生かし、魅力的な世界にしているのは確か。
人間の住む世界へ“かり”に行く小人たちの視点は、釘の通路や階段にしても、釘やボビンやヒモで作られたエレベーターにしても、ワクワクする。
個人的にはそういった世界の冒険をもう少し見ていたかったかな。

展開的には小人の生活が丁寧に描かれ、そして小人の少女アリエッティと人間の少年である翔の関わり合いによって変わる世界を中心に描かれていくのだけど、長編初監督である米林監督の演出は的確で、ストーリー展開も起伏はないものの落ち着いていて安心感があった。
その点では「ポニョ」や「ハウル」や「ゲド」(論外)の様な観賞後のガッカリ感がなく良い感じ。
しかし小さい世界を騒がすお手伝いさん・ハルのキャラクターに少しイヤ味がついているのが勿体ない。
(小人目線がないだけで、悪い人ではないオバさんキャラなんだけど、小人からすれば怪獣。)
ここがもう少しニクめない感じになっていれば爽やかな話になれたかもしれないのだけど…。

爽やか云々という意味では翔がアリエッティに対して「君たちは滅び行く種族なんだ」と言い放つシーンは違和感があったなあ。
なんだか観客に対して説教をたれている様な違和感で、ここだけ浮いている。
そもそもこんな台詞を小人に浴びせるとは翔とアリエッティの関係性をぶち壊しかねないとも思うのだけど。

久々にジブリの落ち着いた(話的に纏まった)ファンタジーを観られてホッとした反面、魅力ある世界観なのでもっとワクワクする様なアドベンチャーなシーンがあっても良かった様に思えた。
そういう意味では落ち着きすぎ?
でも初監督にしてこの完成度であれば次も期待します。


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