シネつう!
JAPAN STYLE !!

渇き。
2014年制作

満足度:

深町秋生の小説「果てしなき渇き」を中島哲也が実写化したバイオレンス・ミステリー。

主人公・藤島の娘・加奈子の知られざる一面が次々に明らかになるミステリー展開が話の軸。
そこで娘を捜索する藤島と、過去に加奈子に憧れた少年の、「加奈子のことを知りたい」という似て非なる真相の探求を平行させる構成は上手いなあ。
最初は時間軸が行き来するので忙しない感じもしたけれど、そこに描かれる"加奈子"という存在感が圧倒的。
2時間映画なのに妙に時間の長さを感じるのは、「こんな世界から早く出たい」と思わせる様な話の力だろうか。

話はただただエグい。
暴力描写はともかく、登場する人物がことごとく狂っていてエグい。
無関心な親子関係からくる現代病を映画いている面もあるか。
暴力、殺人、クスリに売春と人間のネガティブな部分が次々と出てくるのでR15+指定も納得。
一方で中島監督のこのブラックな話を闇に落とさせない画作りは、こういうのも変だけれどエグいのに魅せられてしまうのがさすがですなあ。
血まみれの藤島と、加奈子の透き通るような色の対比は、"黒い赤"と"白い青"っていうイメージかな。
ただその白い青が清さではなく、人間の温かみから遠い色であったと感じた時には、もう"加奈子"が感情を超越した存在であると思えてそら恐ろしい、というか気持ち悪いのかな。
この少女が本心で何を考えているのか…、俺の理解を越えたキャラクターでした。

藤島という色々汚れた人間を演じた役所広司はさすが。
妻夫木聡が演じる後輩刑事もずいぶん気味の悪い人間で印象に残ったね。
しかし加奈子役の小松菜奈は良い存在感だった。
少年が追う過去パートではその姿が圧倒的な象徴として存在し、一方で藤島が追うパートではその姿がない事がこれまた圧倒的に存在感を発揮する。

救いのない映画だけれど、嫌いじゃない。

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