シネつう!
JAPAN STYLE !!

風立ちぬ
2013年制作

満足度:

零戦開発者・堀越二郎の半生と堀辰雄の小説『風立ちぬ』を元に、フィクションの人間ドラマとして描いた宮崎駿のアニメーション作品。

冒頭の鳥型飛行機の離陸方法を見て、「あれは飛ばないだろ」と思っていたらそれは二郎の夢だった。
この物語はひたすらに飛行機という夢を追いかけた男の生きざまを描いていて、その想いが時に彼の生きる目標になり、時に残酷なや現実の原因にもなるわけだ。
そういった人生の機微、人の愛を描いたドラマを観て、まだまだ演出家としての宮崎駿は健在だと実感した。

夢に現れるカプローニは二郎の憧れの人物としての想像の産物だろうけれど、彼を引っ張り上げる者であると同時に、彼を惑わせる者でもある。
二郎の話は感情に訴えてくるものではあるけど、やはり真正面から真剣なドラマを描いているので、どちらかというと重い印象が残るので、そこにカプローニがある種の狂言回しとして、この話を夢の側から縁の下で支えさせるというのは実にうまい作劇だと思った。
そしてそこに表れるリスペクトは、二郎がカプローニに対して抱く気持ちと同様に、宮崎監督が二郎に対して背負わせる生き方に対しても同様に感じるところであります。

さてこの作品の表現特色としては、飛行機のSEを人の声で作っているという部分があるけれど、これはそう思って聞かないと分からないくらいにプロの技だった。
よく聞けば人の声だし、その生の感じはやはり純粋な機械音とは違う。
この映画において、飛行機を生き物ようなものとして描きたいという表れでもあるだろうけど、それが意識しないところでその雰囲気が刷り込まれていく感じで…不思議。

あとモブシーンは…。
もうホントに隅から隅まで人が動いているので、観ていて卒倒しそうになるわw
しかしそれ以上に地震の表現が凄まじかった。
あのように波打つ地面の表現を、地震のそれでは見たことがない。
いやはや毎度のことながら宮崎監督は何か新しいものを見せてくれますね。


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