シネつう!
JAPAN STYLE !!

家族はつらいよ
2016年制作

満足度:

2013年の「東京家族」と同じキャストが再結集し、設定も新たに描かれる人情喜劇。
仕事も引退した主人公・周造は悠々自適な生活を送るが、ある日、妻に離婚届を突きつけられてしまう。

「東京物語」のリメイクだった「東京家族」と同じ面子で喜劇をやろうっていう発想自体が面白いが、観てみると「ああ山田洋次の喜劇だね」と納得の面白さ。
家族構成は全く同じでも設定や演出のアプローチは全く違うので、もちろん別物の映画ではある。

「〜はつらいよ」というタイトルからも、未だに山田洋次の代名詞である「男はつらいよ」を、監督自身が意識しているのも分かるが。
登場人物の掛け合いやちょっとした間など、家族の会話をメインとした人情喜劇のテンポがとても愉快で、どこか懐かしい。
登場人物はバカではないし当人たちはいたって真剣に事にあたっているわけだが、そこが真剣だからこそ可笑しいというのはやはり作劇の妙だろうか。
立川しらくが周造役の主演・橋爪功を指して
「普通、人間が怒鳴れば怖いか、不愉快。それが笑えるのだから喜劇なのである。」
と書いているが、それにはとても納得する。
思えば「寅さん」も怒ってるシーンがやたらと面白かった記憶。

出演者が同じなので、この映画を観て「東京家族」を意識しないというのは無理な話だが、なんか劇中に「東京家族」のポスターが貼ってあったりして、作り手ももはやメタなネタとして扱っている感じ。
本作はそういうメタネタも割と散見されたけど、山田監督もそういうのをやるんだね。
「テレビでよく見る落語家の様な医者」とか言って鶴瓶が出てくるとか反則やw(「おとうと」繋がりかね。)
林家正蔵の「どうもすみません」は…ちょっとギリギリあざとかったが。

さて、喜劇で笑うだけではないのが松竹喜劇。
“家族”というテーマの結論としてもちゃんとまとめがあるが、周造が次男(妻夫木聡)の恋人(蒼井優)から「声に出して伝えて」という部分について諭されるという部分は現代的な感覚だなあと思った。
「そんなことは言わなくても伝わっている」という昭和の男の気恥ずかしさと、「言ってくれなくちゃ分からない」というせめぎ合い。
序盤、次男が緊張しながらもプロポーズをするシーンとの対比として、周造と妻との和解がエンディングにある感じかな。

よく考えると、中盤の家族会議のシーンはカメラ位置が蒼井優の席位置に近いアングルからが多かった気がするが、この家族を外から見た目線という部分もあるのだろうか。


もどる(カ行)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01