シネつう!
JAPAN STYLE !!

記憶にございません!
2019年制作

満足度:

国民から石を投げつけられるほど支持率のない総理大臣・黒田啓介。
しかしある日目覚めた時、彼は政治家になってからの記憶をすっかり失っていた。

三谷幸喜の作品で総理大臣が主人公というと「総理と呼ばないで」が思い浮かぶ。
あれも支持率のない総理の話だったけど、本作は政治ドラマ的な側面よりも一人の“生まれ変わった男”の話を中心にしているので、もう少し狭いドラマになっている感じかな。
その分話が発散せずにまとまっているし、記憶を失った男を主人公にすることで、「いきなり総理にされた」というシチュエーションに観客を巻き込む構造がうまく機能していているよね。
風刺的な側面は最小限で、理念は描いても思想を描かないというバランス感覚も功を奏していて、純粋にコメディとして楽しみやすい作風になっていると思う。

自分としては、話が発散気味でギャグにもノレなかった前作の「ギャラクシー街道」に比べたらよっぽど楽しめたけど、でも作品の規模感としてはテレビの2時間ドラマを見ている様な感覚もあった。
ストーリーとしては黒田が総理としての方向性を再認識するという大きな流れがあるものの、シチュエーション的には何パートにか分かれた構造になっているので、そういったあたりがテレビ的(CMでも入りそう)な風に思えたのかもしれない。

黒田総理大臣を演じる中井貴一はさすがの巧者ぶりで、記憶を失う前の不遜な人物像を一瞬で観る側に理解させ、記憶を失った後はドギマギし通しの小人物に変貌して、やっぱりさすがだなあと。
準主役はディーン・フジオカ演じる秘書官の井坂だが、何となくイメージ通りの役柄ではあるものの、腹に一物がある感じの前半も憑き物が取れ信頼の持てる感じになる後半も、どちらにもそつなく説得力があるので悪くない。
そしてもう一人の秘書官役の小池栄子がいい味出してたなあ。

あと脇役で登場する三谷作品の常連の多さも大いに楽しんだのだけど、梶原善の出オチ感たっぷりの風貌には吹き出してしまいましたw
横山ノックかよw
イメージとのギャップという意味では総理の義兄役のROLLY、TVキャスターの有働由美子もガッツリ出ているのに一見して気づかないレベルでイメージチェンジしていて面白い。
そういえばパンレットを読むと山寺宏一が「さまざまな声」にキャスティングされてたけど…どこだ?
一か所、国会中継冒頭のナレーションは「あ、山寺さんだ」とは気づいたけど、他は分かんねえ。

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