「桐島が部活やめたらしい」
ある高校の、高校生たちの数日の出来事を描いた青春群像劇。

いわゆる青春映画のテンプレから外れているけれど、様々な高校時代の空気感が感じられる面白い青春映画だった。
まあ青春映画と言ってしまうと安っぽくなってしまうのだけれど、部活であったり恋であったり、何かに打ち込んでいる者と無為に過ごしている者といった群像がリアルに描かれていると思う。
客観的に観ると大した話じゃない「桐島が辞めるらしい」という噂、それに翻弄される世界観の小ささこそがリアル。

この映画の面白いところは、構造そのものの映画的な作りだよね。
立場を変えて繰り返し映される「金曜日」。
劇中で言及されるタランティーノは、「レザボア・ドッグス」的構造を意識的にやっていることのアピールであって、もはやメタ的なギャグｗ
タイトルロールであり、圧倒的存在感を示すも劇中に現れない"桐島"は、完全にマクガフィン。
そしてロメロ愛だなあ。
映画好きとしてはこれだけでも楽しい。

桐島不在の中、何組かのグループの話が交差するわけだけど、野球部を辞めた万能型の菊池と、運動音痴で地味な映画部・前田の対比が良い。
万能であるがゆえに、"自分"がないのではないかという不安感が見える菊池。
自主映画に打ち込み、それでも自分の限界が分かっている前田。
個人的には前田にシンパシーを感じるが、学生時代に帰宅部だった俺としては、前田の生き方は…これは憧憬の念なのかもしれない？ｗ
そういう意味では、菊池のラストカットの背中にも感情移入できるのだよね。
型を外しているからこそ、現代のいい青春映画だと思った。

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