シネつう!
JAPAN STYLE !!

寄生獣 完結編
2015年制作

満足度:

岩明均の同名マンガの実写化した、パラサイトに右手を乗っ取られた主人公・新一の運命を描いたSF前後編の後編。

佐藤直紀の劇判は主張しすぎでうるさい。

それはさておき後編も尺に収めるために、原作からのエピソードの取捨選択に腐心している感じがする。
大まかな流れを損なわずにまとめあげたのは上手いと思うね。
特に動物園(原作では公園)での田宮との対峙と、市役所での掃討作戦を並行で進行させた部分は良い工夫だと思う。
フリーライターの倉森が田宮に恋心を抱くというのはちょっとどうかと思ったけど、正体を知ってからの裏返しの憎悪という点では、まあ許容範囲かなあ。

しかしそれ以外では、細かい設定変更が原作の本質を台無しにしかねない部分もあって、色々と不満。
ミギーに「怖い」などと言わせたと思えば、「これが死か…」という印象深い台詞がカットされて、ミギーの心理が薄っぺらくなってしまった感じ。
後藤戦での決定打も人間の不法投棄のゴミに着いた有害物質という“毒”という表現ではなく、ハッキリと放射性物質と言っている。
放射性物質と言われると思想がかって聞こえるので気に入らないのだけど、そもそも不法投棄ではなくゴミ処理場の中の戦いに変えたことでニュアンスも変わってしまった。
おそらくビジュアル面での派手さ(例えばSW EP3のムスタファの様な感じ)が欲しかったのだろうけど…微妙だよなあ。

そして最も気に入らないのがラブシーン。
なぜこの流れでここに入れるか!
不自然にもほどがある。

作品を通じて描かれるのは愛であって、特に新一と母親、田宮とその赤ん坊に象徴される母性愛がそうだと思う。
じゃあ新一と里美は何だと言えばそれも愛だけど、新一が選択する自己犠牲がそんな表面的な愛の話で良いのかは疑問に思った。
ミギーの自己犠牲の発現こそ、論理的思考の向こうにある人間性を獲得した成長の表れ。
田宮の死もそうだよね。
だけど人間である新一はもう一歩先、自暴自棄をたしなめる老婆からの「命を大事にする」ことを学ばないとダメだったのに、それをカットしてまでラブシーンを入れてしまったから、どうしても陳腐な話に感じられて仕方がない。
監督は分かりやすさを取ったってことなんだろうけど、どうしてもそこが不満。

もどる(カ行)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01