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傷物語 T 鉄血篇
2016年制作

満足度:

西尾維新の小説「物語シリーズ」から、同名の「傷物語」をアニメ化した劇場版3部作の1作目。
高校生の主人公は、ある日、手足のちぎれた金髪の吸血鬼と出会う。

実験映画のような雰囲気、とでも言うべきか。
全編が主人公・阿良々木暦のモノローグと、その合間を埋める台詞で構成されたかのような原作小説に対して、この映画ではモノローグを排してその説明描写を全部絵でやってしまおうというチャレンジ精神が見て取れる。
“映像化”という本来的な意味としては正しいだろう。
だが「化物語」から始まったTVシリーズがもっとモノローグも吸収した正攻法な作りだったのに、そのイメージとはずいぶんと違った演出で攻めてきたことが良かったのか悪かったのか。
劇場版だから、ということで作風を変えるというのも一つ手ではあるけれど、シリーズの統一感という中ではずいぶんと異質な作風になってしまったよね。
テンポのいい掛け合いやセリフ遊びを期待していたのに、見せられたのは0.85倍速くらいのテンポで進む何ともじっくりな印象で…台詞回しが遅くない?

全体的に色合いが赤いのはなぜだろう?血のイメージ?ともすればモノクロ映画の様な印象でもあった。
キャラデザイン・そして作画は書き込みがより細かくなって、さすがは劇場版という感じ。
一方で背景はほとんどが3DCGで、その中を2次元キャラが歩き回っているような演出に終始する。
昔、押井守が「イノセンス」で「3DCGの舞台セットの中で2次元キャラに芝居をさせたい」みたいなことを言っていたのを思い出したが、まさにそれをやってのけた感じかなあ。
やはりそれは演出上もパワーのいることだと思うし、キスショットの血痕をたどるシーンなどでは効果を発揮していると思うけど、逆にこれもまたシリーズの統一感の中では浮いてしまってもいる。

明らかに作り手はTVとは違うものを作ろうとしているよね。
その思いが強すぎて、ちょっと観る側を置いてけぼりにしているかも?
それでも怪異の専門家こと忍野メメが現れるとグッと話が進みだした感じで面白くなってきた。
…というところで「鉄血篇」は終わり。
64分と上映時間が短い割には長さを感じる1作目でした。


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