シネつう!
JAPAN STYLE !!

心が叫びたがってるんだ。
2015年制作

満足度:

幼少期のトラウマから言葉を発せなくなった少女と心に傷を持つクラスメイトが、高校のイベント委員としてミュージカルの準備を進める中で成長する姿を描いた青春ドラマ。

冒頭、主人公・成瀬順のトラウマの原因がなかなか生々しい内容で「全然爽やかじゃない!w」と思ったものの、逆に言葉を発せないことに妙な説得力を感じた次第。
ドラマとしてはトラウマの克服、ミュージカルイベントの成功といった部分である意味ベタな予定調和的な展開を見せる。
けど、メインの登場人物4人が個々に心に抱えているものの描き方も配分が良いし、その過程はなかなか感情移入できるものだったね。
学校のイベント活動は今時の学生らしく基本的に無気力(面倒くさい)であるところからスタートしているが、その辺も共感できるなあ
それでいて教師・城嶋の(遠回りな)誘導で段階を踏んでやる気になっていくあたり、いいかげんな教師に見えて意外に有能なんじゃないですかね?w

タイトルは本編を観る前は「クサいタイトルだな」という印象だったのだけれど、鑑賞後は「なんて率直に内容を表したタイトルなんだ」とすっかり納得してしまいました。
という具合に登場人物の心の動きがよく描けていると思う。
惚れた腫れたの部分も高校生にしてはピュア(?)な感じが…劇中の言葉を借りるなら実に「応援したくなる」もので、オッサンの身としては「こんな青春を送りたかった」とも思うわけでして。
まあ、そう観客に思わせた時点でこの作品としては成功でしょう。
4人の主人公の恋路の組み合わせは、これも鑑賞前のイメージとは組み合わせが違っていて意外であったものの納得はできる。

内心の表現方法としての「ミュージカル」は、映画演出としては歌いだすことのお約束と嘘くささのバランスが実は難しいものと思っているのだけど、この映画では劇中劇とすることで嘘くささの部分をなくして成立させている。
この辺は「オズの魔法使」に言及する割には古典ミュージカルから外した見せ方だよね。
でもそれが終盤のイベントの成功と心情の吐露とを重ねる部分でちゃんとしたクライマックスになっていて、計算ずくでよくできた作品だなと素直に感心。
特に「悲愴」と「Over the Rainbow」を重ねて歌うところには参った。


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