シネつう!
JAPAN STYLE !!

海賊とよばれた男
2016年制作

満足度:

百田尚樹の同名小説を原作にした実写映画。
出光興産創業者の出光佐三をモデルにした国岡鐵造を主人公に、戦前戦後の様々な苦難に彼の会社や従業員が立ち向かう姿を描いたドラマ。

原作は未読。
だけど総ページ数700ページの上下巻というボリュームなのは知っていたので、145分という尺では結構内容を端折られてるんだろうなあとは思ってしまう。
とはいえ実際に観てみると、前後する時間軸もエピソード毎に整理されていて分けりやすいし、国岡鐵造という熱い男と、彼を慕って集まった店員たちと共に突き進んでいく話は素直に楽しめたかな。

この映画を観て思ったのは、覚悟という点において「戦争経験者は違う」ということだった。
俺のような生半可な気持ちでは生きていない。
中盤の旧海軍タンクの底から油をくみ上げるシーンで、「弾も飛んでこないし、爆弾も降ってこないじゃないか!」という台詞。
そして日承丸の乗組員がイラン行きを聞かされるシーンもそうだけど、戦争に比べればこんな困難など!という人々の姿勢が今の日本を作ったという事が伝わってくる様だったな。
冒頭で主人公が店員たちを前に「日本人がいるかぎり、この国は再び立ち上がる」と訓示した事を、彼ら自身の手で実現していく過程を目にしたようで熱い。

全体に映画の構成としてはキレイに整理されているとは思うし、ソツなく主人公の一代記になっているとは思うのだけど、一方でキレイすぎて難局のエピソード集の様になってしまった様な気もする。
海上封鎖を突破する話や、経営の危機で店をたたむか否かといったプロットを、映画の序盤と終盤で上手く対比させているところなんかは狙い澄ましたかのような構成ですな。
そのくせ前妻ユキの話にはフォーカスするのに、それ以降の後妻や家族の話は全く出てこなくなったので、主人公のプライベートな面はなんだかアンバランスな部分もあるのだが。
そして「以降大陸へ販路拡大」とか「イラン産油の輸入は1956年に終了」とか、その時はどうしたんだろうと俺が興味をひかれた部分は説明文のみ…(苦笑)。
まあこの話で描きたかったのはそこじゃなかったってことなんだろうし、別にいいけどw

戦中戦後の日本を舞台にしている作品だけど、舞台背景はセットとCGを駆使して実によくできている。
この辺は白組のVFXの安心感でもあるけど、終戦後の東京といった背景から攻撃機や軍艦やタンカーまで、見える範囲のものにリアリティがあって良かったな。

その舞台の上で主人公を演じるのが岡田准一。
30半ばの彼は大半が60代の老けメイクでの登場となるものの、これもまたよくできていて個人的にはあまり違和感が無かった。
彼は目力も貫録もあるからなあ。
ちなみにラストの今際の際にある主人公のアップは髪の毛と首から下以外はCGなんだとか…最近はすごいね。


もどる(カ行)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01