シネつう!
JAPAN STYLE !!

キューポラのある街
1962年制作

満足度:

埼玉県川口市を舞台に、貧しい中で健気に生きていく少女や、周囲の人々の姿を描いた青春ドラマ。

父は鋳物工場をクビになり、母は内職、下の兄弟は3人という家庭環境で、兄弟を見守りながら自分の進学のことに悩み…と主人公の抱えているものは大きい。
それでも健気に上を向いて生きていこうとする姿には共感してしまう(途中、感情が溢れ出して逃げ出そうとする部分も含めてね)。
「貧乏だからダメになるのか、ダメだから貧乏になるのか」という自問は哲学的ですらあるが、「何も勉強しないで高校に行ける人たちには負けたくない。」といったセリフは、だからこそこの主人公は成長するだろうとも感じさせます。

一方で、北朝鮮帰国運動の取り上げ方や組合運動を美化した感じの描き方は少し思想がかった匂いのする話でもあるのだけど、まあこれも当時の空気感という点では仕方がないか。
しかし友人が北鮮へ帰っていく姿を「向こうでも頑張ってね!」と見送るシーンは、その後の情勢を考えるとただの離別という以上に複雑な心境にさせられるなあ…。

主演は当時17歳の吉永小百合。
イメージが固まってしまった後年とは違って、様々な表情や感情、身体変化の描写などがあってなかなか良い演技。
個人的には脇を支える役者、東野英治郎や加藤武の味のある雰囲気が好きですが。


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