シネつう!
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劇場版 空の境界
第五章 矛盾螺旋
2008年制作

満足度:

前作から3ヶ月後に公開された、第一章の次の出来事にあたる第5作。
心中を図り自室に進入してきた母親を逆に殺してしまった青年・臙条巴。
家にも戻れず街をさまようが、そこで両儀式と出会う。

これまでの一章〜四章は約50分程度の中編作品だったけど、この五章は1時間50分の長編。
これまで暗躍していた荒耶宗蓮が前面に登場し、式や橙子との対決と、話のボリュームも盛り上げ方も劇場版の冠にふさわしいものになってました。

展開としては、演出上冒頭で時系の繋がらないカットが連続して現れ、面食らいつつも引き込まれてしまったのだけど、よもや全編が時系列入り乱れるとは。
全体の流れを行きつ戻りつさせることで、ある空間で繰り返される最期の一日の不可解さとが感覚的にリンクして面白い。
実験的な印象も強いけど、訳が分からないほどでもなく、頭の中で繋がりを整理して話を追っている事が楽しくなってくる様なさじ加減が良いね。
よく見れば冒頭のシーンで包丁に血が付いていないので、それに気づければ最初から視点の取っかかりをもてるのではないかな?

シリーズの主人公とは別に本章で登場した臙条巴は、この話ではあまり変化のない式と幹也に対して、割と積極的に変化していくという点で単作の主人公としても割と正統派な設定。
彼の行為が本人にとって報われたのかどうかはともかく、少なくとも感情に触れるだけのものは見れたし、それは荒耶が人形と言うにはあまりに人間だった。
やっぱり巴が主人公だよね。

それにしてもこんなグチャグチャの時系列を、原作では文字でどのように表現していたのだろうか。
この劇場版を観ていてそれが不思議でしょうがなかった。
(…と思ったら、原作ではほぼ時系列で描かれていたようです。やっぱりそうだよなw)

劇場版らしいという点では、戦闘にいたって式だけではなく、これまで解説役に近かった蒼崎橙子がようやく魔術師らしい活躍を見せて盛り上げてくれる。
死んだと思ったら実は…、はある種の常套手段であるけど、本作のそれはちょっといきなりでビックリな感じもw
人形師という点での前フリは…第一章?
普通の話なら反則に近いけど、この世界観では許せてしまうから良いか。
それに…、その登場シーンがそれまでさんざん見せられた時系の繰り返し演出の一環なのかと思いきや…という展開に昇華されていたんですわ。
その話の持って行き方が上手かったね。


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