シネつう!
JAPAN STYLE !!

THE FIRST
SLAM DUNK
2022年制作

満足度:

井上雄彦の漫画「SLAM DUNK」を原作にした劇場アニメ映画。
インターハイ2回戦の湘北高校vs山王工業高校の試合を中心に、並行して宮城リョータの過去を描く。

予告編の時点ではCGアニメっぽいということ以外はほとんど情報がなく、「えーCG映画かあ、残念だなあ」などと思ったのは秘密です。
いや秘密でもなんでもなく正直そう思ったわけですが、蓋を開けてみればCGアニメでなければできないようなスピード感のある試合場面に感動し、グリグリ動く自由なアングルで描かれる個々のカットに当時読んだ原作漫画の1コマ1コマが思い出されて、「あーこれはCGアニメで作って正解だわ」と黙り込まされてしまいましたw

内容的にはTVアニメ化されなかったインターハイの山王戦が描かれるということで、その点でも原作既読者としては感慨深いのだけど、全31巻の物語のラストエピソード(25巻〜31巻)だけを切り取った話なので、単体の映画として観ると完全ではないようにも思う。
何というか、本当は25巻までに積み上げたキャラクター描写の先にあるのがこの「山王戦」というエピソードだから、例えば桜木が流川にパスを出したり、その逆だったりといった場面の感慨は圧倒的に原作既読者の方が得られるだろうと思うしね。
試合の場面だけで言えば1巻〜25巻までの内容は知っているのが前提になっているような気はします。
それでも余分な説明描写を最低限にしているところを見ると、作り手は観客を信じている様には感じたし、そう信じてもらったのだということは観客としては嬉しい部分ではあるかな。

その様に「山王戦」という面では切り取られた印象は受けるのだけど、それ以外で一本筋を通すために宮城を主人公に据えたことが本作のキモでもある。

宮城のエピソードは読み切りの「ピアス」から組み込まれた部分とのことだけど、自分は未読です。
でもこれが入ったことで本作の単体映画として弱かった部分を補強できているのは間違いない。
結構重めの過去を背負った宮城のエピソードは親子の感情面でもだいぶシリアスで、桜木が主人公の「SLAM DUNK」とはまたテイストが違うような感じもするけれど、「リアル」を読んだ身としては「あー井上雄彦の作品だな」という納得感が強い。
個人的には沢北の「必要な経験」の追加場面も「上手いな」と思ったね。

クレジットで「原作・脚本・監督」とクレジットされている通り井上雄彦がガッツリ絡んだ本作は、間違いなくどこをどう切っても「井上雄彦作品」になっていて、当時原作を読んでいた時の気分も思い出させてくれた。
特にセリフを入れなかった山王戦ラスト十数秒の原作のインパクトは、映像でもそのまま同じ様に心に残る場面となった。
映画において音とはとても重要な要素だけど、この映画のその場面は音がないことで画面に吸い込まれるような気持ちにさせられたからね。

原作既読者であればあるほど、26年後に映像となって追体験できる喜びは大きくなるだろう、そんな作品だということは間違いない。


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