シネつう!
JAPAN STYLE !!

亜人
第3部 -衝戟-
2016年制作

満足度:

桜井画門の同名漫画の劇場アニメーション作品。
日本を明け渡すよう要求する亜人・佐藤。
彼を止めるべく行動を開始した主人公たちを描いた第3部。

映画としてはこの第3部で完結だけど原作は連載中ということもあるのだろう、今回の佐藤の目的を挫いたとはいえ、話としては「一区切り」程度の決着な印象。
なので3部作で1つの作品とした場合は、海斗との関係にしても、米国の暗躍にしても、伏線を張った割には少し宙に浮いたままという感じがしなくもない。
まあそこは仕方がないかな。

前作は主人公・永井の逃亡生活・厚労省の戸崎の立ち回り・亜人の佐藤のテロ・そして少年院に入った海斗の話が入り乱れたので、話としてはとっ散らかった印象が強かった。
でも本作のストーリーは「佐藤を止める」という大目的に収束し、戸崎に合流した永井達と佐藤との決戦にほぼ集約されているので、ずいぶんと観やすかったね。
その上で、銃撃戦やIBMの格闘といった派手な見せ場も多く、アクション映画としてなかなか面白かったと思う。
アクション場面ではCGアニメであることを最大限に活かした映像になっていて大満足。
個々のキャラクター造形も一見すると違和感のないレベルのCGで進歩を感じるけど、顔のアップなどではまだ角度によってちょっと違和感が残るかな。

3部作を通しての部分では、「合理的すぎる」として描かれた永井の精神的な進歩がキーか。
特に傭兵の平沢との関係が彼を人としての強みと弱みを表面化させて物語を動かしているけれど、平沢さん…主人公にああいうアドバイスをするとか死亡フラグが立ちますぜ…と思ったら案の定(苦笑)
あとは劇中で任務よりも戸崎を守ることを優先する下村のメンタル部分も少し触れていたけれど、設定や原作での描写に対してはかなり簡略化されている様子。
まあ本筋からすると枝葉かもしれないけど、彼女にとって「戸崎がくれた新しい人生」に対比される「壮絶な過去」を省略されると、ちょっと行動原理の説得力が薄く感じられてしまうのでそこは残念。

しかし一番魅力のあるキャラはやはり佐藤だな。
彼の背景にはイデオロギー的なものは存在せず、彼にとっては一連のテロはゲームのための手段でしかないことが3部作を通じて浮き彫りになってくるだけというのが凄い。
良心の呵責というものが一切存在しないこの狂ったキャラクターは、違った意味で実に清々しいw
声を演じた大塚芳忠の表現も相まって、とても魅力のある悪役になっていたと思う。


もどる(ア行)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01