シネつう!
JAPAN STYLE !!

AKIRA
1988年制作

満足度:

大友克洋の漫画を原作にした、アニメ史に金字塔としてその名を刻む劇場用アニメ映画。
第三次世界大戦後のネオ東京を舞台に、ある事故をきっかけに「能力」に目覚めた少年が、仲間や様々な組織の思惑が錯綜する中で暴走を始める。

何度観ても、とにかくその圧倒的なビジュアル表現には舌を巻く。
バブル景気まっただなかに制作されたということもあるのかもしれないけど、どれだけ金をかけてるんだろう…と心配になるくらいに動きに対するこだわりがひしひしと伝わってくる。
冒頭のバイクでの抗争で描かれるテールライトの残像も新鮮だけど、そもそも動きのあるものすべてにしっかりと質量が感じられるのが目を引くところ。
転倒するバイクや吹っ飛ぶ人はもちろん、崩れる建物や押し寄せる水。
さらには水蒸気や煙にまで質量を感じるのは、動画の表現として…なんかもう…脱帽ですw

そして重さに関しては、超能力による見えない力の重さも画面から伝わってくるわけで、もうそうなると演出力のセンスとしか言いようがないわな。
超能力という「見えないものを絵に描いている」わけだから。
戦車砲を止めたり戦車そのものをつぶしたり、地面や壁に現れる円形のくぼみによる大友作品らしい表現は力として分かりやすいけど、それ以上になにか空気で力の緊迫感と説得力が伝わってくるから凄いよなあ、ほんと。

ただ、ストーリーは原作ほどの広がりがない部分をどう受け取るか…。
この映画は原作進行が2/3ほどの時期に制作された作品なので、後半部分が原作とだいぶ違ってしまうのは仕方がない部分はあるのかもしれない。
個人的には原作のミヤコ(19号)の重要なポジションや、根津やジョーカーといった脇役のちゃんとした役回りが気に入っているので、どうしてもこの映画でのちょい役っぽさは物足りないのだけどね。

でも「AKIRA」の“映画版”として好意的に解釈すれば、登場キャラを大胆に整理したことで2時間という尺にダイジェスト感なく世界観を凝縮することに成功していると思う。
なによりその圧倒的なビジュアルで、生き生きと動く主人公たちや退廃的・終末的な未来の空気を描き切ったという意味では、やはりアニメーション表現としての作品の価値は揺るがないと思うのです。

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