シネつう!
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居眠り磐音
2019年制作

満足度:

佐伯泰英の同名小説の実写時代劇作品。 江戸での3年の勤番を終え、故郷へと戻った豊後関前の藩士・坂崎磐音。
その日、同じく勤番を終えて共に帰ってきた幼馴染の藩士が起こした事件をきっかけに、磐音は脱藩し江戸での狼人暮らしへと身をやつすことになる。

全体的にTVの時代劇ドラマっぽい…というのが正直な印象。
話の展開は「脱藩までの事情」、「江戸での用心棒」、そして「故郷に残した祝言するはずだった相手との再会」の3部構成チックな展開になっている。
「江戸での用心棒」のくだりは特にTV時代劇っぽいというか、時代劇としてはとてもオーソドックスな内容なのでいい意味で安心感があるものの、逆に言えば展開に裏切りがない感じ。
良い人は良い人のままだし、悪い奴は悪いまま。
総じて人物像が深掘りされていないように見えてしまうところが、ちょっと勿体ないかなあ。

主人公を演じる松坂桃李は優し気な雰囲気と剣の達人感を上手く醸し出していて良い感じだけど、磐音が背負っているモノというか、業の様なものはもっとにじみ出ても良かった気はする。
故郷での事件の経緯を見せれば、脱藩への決意の過程は見せずとも良いと考えるのも分からなくはないけど…。
そもそも、おこんに対して故郷での事を語るくだりに唐突感を覚えたし、他にも場面場面でたまに話を急いでいる感じがしたのがちょっと引っかかった…のかも。

とはいえ物語におけるそれぞれのキャラクターの役割はよく配置されているので、割り切って観れば面白いとは思った。
長屋の大屋とのやり取りは落語の話の様な雰囲気もあったし(これは大屋を演じた中村梅雀が上手かったか)、柄本明演じる両替屋の関西弁がまた強調されたうさん臭さで面白い。
全体にもところどころクスリとさせる会話があったし、楽しめた部分もあったと思う。

時代劇の見せ場である殺陣のシーンについては、正直言うと少し迫力不足な気はした。
今どきのアクション映画のアクションはもっと派手な方向性なので、それらと比べるとさすがにオーソドックスな見せ方で段取りに感じるところがちょくちょくあったかな。
そうなると、やっぱりTV時代劇の様に見えてしまうんだが…。
まあ別にそれが悪いというわけではなくて、作品全体の雰囲気としてはそれに統一されているから、これはこれで作風として受け入れてはいるのだけど。


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