シネつう!
JAPAN STYLE !!

アルプススタンドのはしの方
2020年制作

満足度:

高校演劇の戯曲を原作にした青春映画。
夏の高校野球大会で甲子園に出場した野球部の試合を観戦しにきた4人の生徒。
アルプススタンドのはしの方で起きる気持ちの交差を描いた会話劇。

試合そのものを一切映さずに限定した空間(アルプススタンドの端とその裏の通路)での会話劇に終始しているあたりなどはいかにも舞台劇っぽい構成。
上映時間75分というのは一般的な長編作品にしては短めな気はするけど、物語は小気味よくまとまっていて観ていてスッキリする。
(ちなみに原作の舞台劇は上演60分想定とのこと。)
報われることもあるだろうし挫折することもあるだろうけど、「しょうがない」と諦める必要はないというか、少なくともそれを言い訳にして気持ちを偽ることはないんだという話は、高校演劇用の戯曲だと考えればなおさら観客自身に対するリアルタイムな応援メッセージともとれる内容になっていて良い。
前向きな感情で終わる話だったので、観ていて気持ちよかったな。

一見すると主題に見える“野球観戦”という状況については、実際にはテーマを描くための比喩的なものでしかないんだけど、そこが上手い。
4人の主人公たちの別々の背景をもった“頑張ったこと”を、劇中でもほぼリアルタイムの1時間強という時間でさらけだして交差させて集約させる、そのために高校野球という“青春と努力のアイコン”をバックグラウンドとして使用しているわけだ。
高校球児に対する共通のイメージが日本人に定着しているからこそ出来る内容だとも思うけど、さらに会話にしか登場しない“園田”と“矢野”という部員にそのイメージが集約されているところも作劇の妙。
背後の試合で確かにその存在が凄く伝わってくるのに全く映さないところは、「桐島、部活やめるってよ」の“桐島”的なマクガフィンの様でもあるけれど、ともかく終始“野球”そのものを映さなかったことで、より概念化された“努力”が主人公たちの気持ちと一体化した感じはするよね。

一つ残念なのは、甲子園設定なのに甲子園のスタンドに見えなかったことだけど…。
まあそこは話の根幹には影響しないので、脳内変換するという事でw


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