シネつう!
JAPAN STYLE !!

映画大好きポンポさん
2021年制作

満足度:

杉谷庄吾【人間プラモ】原作の同名漫画をアニメ化した劇場映画作品。
幼い少女に見えるが映画の名プロデューサーであるポンポさん。
その下でアシスタントとして働いていた監督志望のジーンは、ある日ポンポさんの書いた脚本の映画化に際して監督をするように言い渡される。

原作は“ニャリウッド”という架空の映画の都を舞台にして映画を作る人々の姿を描いた業界モノといった趣の内容で、プロデューサーや監督や俳優といった人々の役割や矜持をテンポよく描いていく内容が魅力。
特に“映画以外には何もない”ジーンを主役に彼の監督としての成長を軸に描いている話だけど、この映画は原作の1巻の話をベースに後半でオリジナルの展開も見せている。
そのオリジナルの部分も良かったなあ。
具体的には、ジーンのハイスクール時代の同級生・アランのくだりがオリジナルの部分で、第三者の視点からジーンの熱量に触れるための仕掛けがよく出来ていた。
単なる回想やモノローグにするわけではなく、アランがインタビュアーとしてジーンのそれを引き出して語らせる。
その熱に当てられた人々が支持しているという部分に至る説得力があったと思う。

「誰のための映画を作っているのか。」
「映画は誰のためにあるのか。」
そんな問いかけに悩みながら答えを見つけていくジーンの姿は熱い。
この姿を見ていると「だからこそポンポさんはこの映画をジーンに撮らせたのだろうか」という気すらしてきて、「やっぱりポンポさんは名プロデューサー!」と思ってしまったw
ラストでジーンが「好きなところは上映時間が90分」と答えるところはお見事だなあ。(ここは原作通り)
その上で、本作自体の尺も(クレジットを除いて)90分というメタなことまでやってのけるんだから、ニヤついてしまう。

ちなみに原作のジーンはもっと病んでいるふうな目つきの印象なんだけど、このアニメ版のキャラデザの目つきはもう少しだけマトモ(w)なのでなんとなく安心感はあるかな。
(余談ですが、この目つきでフリークでメモ魔って、観ているとなんだか一瞬「ヒロアカ」のデクと重なって見えてしまった。)

まあそれはともかく、ジーンの監督としての才能に説得力をもたせないとこの物語は成立しない。
そういう意味では序盤で出てくる「15秒の予告スポットを編集しろ」というポンポさんの無理難題に対するジーンの成果物が、ジーンの才能という本作におけるすべてのフックになっているよね。
そしてそのジーンの予告を映像として見せきったことにこそ、本作を動画作品にした意義を感じる部分でもある。
これは漫画では表現しきれないもの。

あとはジーンが撮った映画(劇中劇)の場面では上下に黒帯を入れて画角をシネスコ(2.35:1)に変えている部分も映像作品ならではの表現。
まあ横長画面のシネスコを“映画”という記号として使うこと自体はよくある演出ではあるけれどね。
反対に通常(全画面)の場面がちゃんとアメリカンビスタ(1.85:1)になっている部分に、本作の“映画”としてのこだわりを感じました。


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