シネつう!
JAPAN STYLE !!

WOOD JOB!
〜神去なあなあ日常〜
2014年制作

満足度:

三浦しをんの「神去なあなあ日常」を原作に、矢口史靖が実写映画化した青春コメディドラマ。
大学受験に失敗した主人公は、思いつくままに林業研修に参加するが…。

冒頭、チャラい高卒の若者である主人公・勇気が不快w
挨拶もろくにできない若造という今時のキャラクターを染谷将太は上手く演じているかな。
ここは観る側をイラッとさせてなんぼだと思うので。
つまり全編を通じて、そういった若者が変化していくところがドラマの根本で、林業に携わっていく中で色々な経験をし、次第に精神的にも成長していく様子が清々しい。
ヒロイン・直紀(長澤まさみ)は主人公の動機ではあるけど、くっつくかくっつかないかなんて枝葉であって別れのシーンもさっぱりしてる(「愛羅武勇」の手拭いが前振りを含めて良い味を出している)。
エンドクレジットでその後の展開は想像におまかせ、それくらいなのが良いね。

主人公の変化を顕著に表すのは、中盤に昔の彼女の仲間が「スローライフ研究」と称してやってくる場面か。
そこに暮らす人たちからすれば「スローライフってなんだ」って話だが、目にするものすべてが珍しい都会モンは(自覚なく)林業やそこでの暮らしを下に見る様なものの言い方をする。
それに反発して「もう帰れ!」と言い放つ主人公だけど、冒頭での主人公はそちら側の人間だったわけで、ここで腹を立てて「帰れ」と言ったことは「林業が自分の仕事である」という自覚が芽生えた証拠。
分かりやすく共感できる変化の見せ方として上手いよなあ。

そういう成長物語の一方で、林業という業界モノとしても魅力のあるドラマになっているところがさすが。
兄貴分である飯田ヨキを演じた伊藤英明は役柄にすごくハマっていて感心した。
取っつきにくいけど、基本的にいい人なんだよなw
ヨキの子作りのくだりも枝葉ではあるんだけど、クライマックスであるオオヤマツミの祭が男性器に見立てた大木を女性器に見立てた的に突進させるという何とも豪快な神事で、エンドクレジットでそのご利益のほどが分かって面白い。

そういえば山の神は男神だと思うんだけど、劇中で主人公の手を引いた神は女神なのか。
あれは違う神様なのかな。
そのシーンでも手に着いたご飯粒だけで、どこで出会った神であるかを示唆するあたりがニクイ。
冒頭で山の神に手を合わせることもしなかった主人公が中盤では自発的にお供えをした、そのことに対しての結果であるという示唆でもある。
神様は見ている。
日本の信仰における精神性が感じられて良い感じだった。

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