8
ファイル共有ソフト「Winny」の開発者・47氏こと金子勇が京都府警に逮捕される。
開発者が逮捕されるのは不当だと考える弁護士の壇は金子の弁護に関わることを決意するが…。
この事件当時大学生から新社会人という頃だった自分は、実際に「Winny」直撃の世代だったと思う。
特に理系の大学に行っていたということもあるけど、自分でもPCを触っていた身としては「Winny」の様な共有ソフトの情報に触れる機会も多かった。
警察がキンタマウイルス(暴露ウイルス)に引っかかったニュースなどを見ては「アホだなあ」などと他人事のように思っていたものの、一方で当時から47氏の逮捕にはやっぱり納得できなかったし、最高裁までいって最終的に無罪になったニュースもネットニュース系のサイトで追っていた記憶がある。
なのでこの出来事は全く知らないことでもなかったのだけど、もちろんどんな裁判内容だったのかは知らなかったのでこの映画を興味深く観ることができました。
特に裁判モノとしてもとても真摯に作られていたので、そこには好感が持てたね。
三浦貴大演じる壇弁護士の熱すぎず真剣な姿勢はとても良かったし、吹越満演じる秋田弁護士老獪な手腕を見せるシーンなどは見応えがあったと思う。
並行して描かれる愛媛県警の裏金事件はやや脇道っぽい印象もあるけど、裁判での匿名の重要性を語る場面との対比とした構成は「なるほどなあ」とは思った。
「Winny事件」を語る時の「食事用のナイフで殺人が行われた時、そのナイフを作った人間は罪人か?」という問い掛けは、分かりやすい例えとしてよく使われる印象。
P2Pの技術概念とWinnyの画期性などの技術理解はこの事件の背景としては知っておいたほうがベターかも知れないが、究極的に言えばこの物語は「ナイフの作者を逮捕した警察の妥当性」を問うた話なので、実際には技術的な理解がなくてもついていける内容になっている。
ドキュメンタリーではないのだから物語としてどの様に引き込むかというところも重要なわけで、そのあたりの話の整理と物語への展開も上手かったね。
そういう意味では先述の弁護士たちが話を引っ張る役どころとして地に足付いた良いキャラクターになっていた。
そして話の中心はもちろん47氏こと金子勇で、演じるのは東出昌大。
正直演技の上手い人という印象はないのだけど(苦笑)、それでもこの映画では金子氏のキャラクター的にやや印象的な動作口調をする様子が上手くハマっていたかなとは思う。
映画は第一審で金子氏が有罪になるところまでが話のメイン。
エピローグでその後の無罪と、無罪判決の1年半後に42歳で亡くなったことが描かれる。
もし47氏が逮捕されていなかったらWinnyはどんな変化を見せていたのだろうか。
他にどんな新しいプログラムが生まれただろうか。
そんなことを空想する。
もどる(ア行)
当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01