シネつう!
JAPAN STYLE !!

愛のむきだし
2008年制作

満足度:

ユウ(西島隆弘)、ヨーコ(満島ひかり)、コイケ(安藤サクラ)の、親からの愛情が欠落した3人の若者。
彼らの行動を通して変態・宗教・暴力を描いた園子温の純愛映画の一つのカタチ。

この映画は上映時間が237分もある。
4時間、普通の商業映画なら2本分はあるような上映時間だけれど…、それが一瞬で目の前を駆け抜けてしまった。
こんなパワフルな映画にはなかなかお目にかかることはないね。

これだけの長尺でまったく飽きが来ないのはやはり構成の上手さ。
前半はVシネマ調のケレンのある演出がたっぷり。
パンチラなどのエロや血しぶき満載のグロ描写も、極端に描くことでギリギリ笑いにしてしまっているセンスがいいです。
特に盗撮のくだりはまったくリアリティがなく、バカでしかないし、これだけ見れば完全にバカなコメディ映画w

しかしそれが次第に変わってくる。
ユウがヨーコを新興宗教から救い出そうとする後半、それまでケレンの世界だった作品が、一気に登場人物たちの感情のぶつかり合いになっていく。
ヨーコがユウの上にまたがってコリントの信徒への手紙一第13章を暗唱する場面で、ヨーコを見上げ、カットを割らずに一気に見せてしまうところ(ユウが確かに画面の外いるのが良い)はこの作品のクライマックスの一つか。
そこから伝わってくる勢いや熱気は、この映画全体から感じ取れるそれを全て内包しているかもしれない。

作品的に新興宗教を否定的に描いているけど、その宗教側であるコイケを安藤サクラは実に上手く嫌な演技で表現してますな。
砂漠で巨大な十字架を背負うユウやヨーコとその家族、そしてそれを砂丘の上からあざ笑うコイケ。
このイメージが映し出された瞬間には、ガツンと頭を殴られたような気さえした。

4時間全力疾走で描かれたこの映画は、最後まで立ち止まらない。
ユウとヨーコの熱気を帯びたむき出しの愛は、作品の最後で本当のクライマックスを迎えるわけだけど…。
このストーリーを語るのに、この映画はこれ以上短くする必要はない、それくらい見事にまとまった大長編作品でした。


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