シネつう!
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悪人
2010年制作

満足度:

吉田修一の同名小説の映画化作品。
殺人を犯した青年と、出会い系サイトで知り合った女性の逃避行を描いたドラマ。

被害者と加害者という図式だけで、それすなわち善と悪というわけではないというお話。
その“悪人”という定義の曖昧さこそがこの作品のテーマだけど、個人的にはこの映画の登場人物にあまり感情移入できなかった。
生い立ちは違えど生まれ育った町から外に出ず、孤独感にさいなまれていたという主人公二人がお互いに共感する様子。
だから出会ったばかりでも逃避行に移ってしまった女の感情も理解はする。
でも俺はどうも一歩引いた目で見てしまって乗り切れないんだよなあ。

特に深津絵里が演じる女の方は特殊な感情だと思うけど、そういう感情になるほどの日常の閉鎖的な孤独感がイマイチ見えなかった気がする。
もちろん一人ケーキや、妹のベッドを見るなどの部分で表現されているけど、それだけで激情的な逃避行に出られるものなのか俺には分からない。

なのでどちらかというと柄本明演じる被害者の父の方が素直に共感できるかな。
ただ、この一番素直な造形のキャラも、殺人の被害者である娘(満島ひかり)の人間性が結構クセモノなので、観ている方は素直に見てられないという複雑なキャラでもある。

終盤、娘の殺害現場に花を持って現れる柄本。
その直前に、花を供えに来ていた深津は、柄本の姿を見て結局供えずに立ち去る。
この被害者女性に対する二人の対比こそが、悪人を規定するブレを描いたこの映画のテーマそのものだね。

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