シネつう!
JAPAN STYLE !!

アルキメデスの大戦
2019年制作

満足度:

三田紀房の同名漫画の実写映画化作品。
1933年、海軍省の戦艦建造計画会議で持ち上がった二つの新型艦の案。
これからは航空母艦が重要となると考えをもつ山本五十六は、優勢となっている対案の巨大戦艦案を潰すべく“数学の天才”と呼ばれた男をスカウトする。

原作は未読。
「通常はありえない短い期限で軍艦の建造費を割り出せ、ただし詳細な情報は軍機のため閲覧できない」という無理筋なミッションを描いた頭脳戦だけど、なかなか面白かった。
何も情報のないところから新型艦の図面を数日で起こして云々という展開はさすがに漫画みたいな話だけど、「それだけ天才」という表現だと受け入れるとして、“その上で”この話を観た時には主人公と補佐官のバディ感とか会議での逆転劇とかは普通に楽しめたように思う。
特に終盤の新型巨大戦艦「大和」に対する価値観の相転移は興味深かったな。

この話は巨大戦艦の建造案をいかに潰すかが目的の話だけど、結果的に大和が建造されることは周知の事実。
となれば失敗することが分かっている物語にどう共感させるのかという部分が気になってくるわけだが、「無意味な戦意高揚を避けるためには巨大戦艦を作らせてはならない」が、もし戦争が避けられないのであれば「一億玉砕の身代わりとして沈んでもらう」という論法には驚かされたし、なんだか納得させられてしまったね。
まあそういう思考は戦後史観的な解釈が強いようにも思うものの、「大和が何の象徴であるか」という部分において実はブレがないという部分が面白い。

主人公の櫂を演じるのは菅田将暉。
冒頭の登場シーンでは軍を毛嫌いして非協力的な様子なので、任官してやる気を出してからの様子は何だかキャラが違ったようにも感じてしまったのだけど、変わり者の天才という感じは悪くない。
補佐官となった柄本佑演じる田中少尉とのバディ感も良かったな。
最初に田中少尉が櫂に対して持っていた抵抗感が次第に薄れていき、どんどん協力的になっていく様は展開としてはベタだけどやっぱり観ていていい気分にはさせる。

あとは物語上での対峙する相手となる平山造船中将ね。
演じる田中泯の貫禄が実にいい塩梅で効いている。

そういえば本作は監督は山崎貴だけど、無理に「泣かせ」に走るような演出が無くてよかったなあ。
そもそも調査と計算と会議が主体の話なので、そんなものが入る余地も無いかとは思うがw
浜辺美波演じる尾崎財閥の令嬢は出てくるけど、そことの関係も変に色恋沙汰が発展するわけでもなく抑制効いてたのは割と好感です。


もどる(ア行)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01