シネつう!
JAPAN STYLE !!

浅田家!
2019年制作

満足度:

写真集『浅田家』で木村伊兵衛写真賞を受賞した写真家・浅田政志の半生を基に描いた家族ドラマ。

家族を被写体にいろんな職業に扮した姿を撮ったユーモラスな写真集が出来上がっていく過程が面白い。
テンポもいいし、いちいちクスっとさせてくれるねえw
主人公は文字通り家族を巻き込んでいったわけだけど、家族が協力的というか、家族から愛されているのが良い。
序盤は特に、悪く言えば独りよがりな主人公の行動が目に付くのだけど、観ていて嫌な気分にさせないのは彼が周囲の人々から愛されているのが伝わってくるからかな。
それはひとえに配役の妙によるところも大きくて、主人公を演じた二宮和也のニクめない感じ、父役の平田満や母役・風吹ジュンの彼を見守る姿の暖かさや、兄役・妻夫木聡の「しょうがねえなあ」といった表情がとてもいい雰囲気を作っていると思う。
黒木華が演じる主人公の彼女も、主人公のよき理解者としてとても大きな存在だけど…彼女のあのプロポーズのもっていき方は強いなあw

タイトルの「浅田家!」はもちろんこの家族のことであり、そして写真集「浅田家」のことでもある。
「浅田家」=“家族写真”というテーマを通じて後半は東日本大震災の写真返却活動の話につながっていくわけだけど、そのギアチェンジの仕方も自然な感じで良かった。
序盤の写真撮影のユーモラスさと東北の被災地というシリアスな側面は両極端な要素であるのに、主人公の“家族写真”に対する関わりを橋渡しにして絶妙なバランスで成立させているのがよく出来ている。
もちろん現実にはもっとキツいこともあったろうが、でもそのあたりを上手くマイルドにまとめていくさじ加減が上手いんだよね。
きれいな部分ばかりが描かれていると言えばそういう側面もあるかもしれないけど、物語として、“思い出の形”としての家族写真を撮ること、今を残すこと、ありし日から想いを引き出すこと、浅田氏の「写真」に対するアプローチを描くことで「家族」という物語の主題から外れないその構成には感心したし、感動もしたのです。
その上で、プロローグを拾った上に「ただのしんみりでは終わらせねえぞ」という感じに落とすエピローグがまた小ニクいw
好きですよ、そういうスタンス。

個人的に家族愛の話に弱いという部分があるので、この映画のような話にはやっぱり心打たれやすいといえばそうだと思う。
一番心にぐっと来たのは、父親が入院したあと、兄と行こうとしていた見舞いをすっぽかして東北に戻ろうとする主人公を母親が平手打ちしたシーンだな。
あの後の母親のセリフがとてもよかった。
あの平手打ちには愛があったし、主人公への理解もあった。
あんなセリフが出てくる母ちゃんは、本当に強く、そして良い人だ。

本当に温かい家族の物語でした。


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