シネつう!
JAPAN STYLE !!

アシュラ
2012年制作

満足度:

ジョージ秋山の同名コミックを原作にしたCGアニメーション映画。
応仁の乱、飢饉などにより人々が飢えに苦しむ時代。
そこに生まれ落ちた主人公アシュラは、言葉を知らず、人を食らって生きながらえていたが…。

初っ端から人肉喰らいという話がショッキングだけど、この作品は人が人であるということの意味を、70分強の短い時間で見事なドラマとして描いてみせる。
明らかに畜生であった序盤、坊主に名を与えられ、少女に心開いて徐々に言葉を覚えていく様子に光が見えるかと思えば、終盤には餓えた農民に追い立てられる。
皮肉だけれど、極限にあれば真っ当と外道を踏み越えてしまいそうになる人間の姿のなんと…。

本能的なところから抜け、涙し絶望する姿に人が人たる知性を見るか。
この話の世界にあって、超越者のごとき坊主の話は深い。
特に2度目にアシュラに会った時に彼の人間性を喝破し、あまつさえ祝いに自身の腕を差し出すとは!

一方で人としての尊厳を守るためにアシュラの差し出す肉に手を付けなかった少女。
馬肉を人肉と勘違いした結果だけれど、アシュラの好意とのすれ違いが実に哀しい。
アシュラの純粋な想いは報われてほしいと思うけれど、ただそれまでの人食いや殺人といった行為がもたらした結果だけに、なんとも…。

修羅か畜生の道とも思える世界観を、重厚に描き出した演出は見事。
マンガ顔のCGキャラなので、造形によっては無機質になる可能性もあるけれど、書き込みの様な陰影を重ねたりしてそのあたりはカバーしているか。
アクションシーンはカメラも動いて良くできているが、まあそこはCGの得手だよね。
何にしても斧を担いでいるビジュアルイメージのインパクトがすごい。

壮絶で、悲劇ではあるけれど、エンディングで救われたのは良かった。
アシュラは死ぬべき生き方はしていない、と俺は思う。


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