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三島由紀夫の小説「金閣寺」を元に、細かい設定を変えて市川崑が映画化した作品。
主演の市川雷蔵といえば時代劇の大スターだけれども、この映画は現代劇。
特にメイキャップもない雷蔵(当時28歳)は普通の青年に見えたなあ。
主人公は自信の吃音に劣等感を感じていて、それが全編に渡って主人公の心の闇の原因ともなってる。
吃音をとやかく言う者もいれば言わない者もいるけれど、足の不自由な仲代達也演じる友人・戸刈に「気を遣う奴らは偽善者だ」と吹き込まれ、ますますもって思い詰めていく主人公の姿が痛々しい。
終始達観し、世間の偽善を蔑んでいたように見えた戸刈も、自分を“かたわ”だと罵られた時の激昂具合からして、結局は劣等感の裏返しから来る強がりだったようだし、結局人間なんてそんなもんなんだろうけどね。
劇中の時間軸は、割と説明無しにポンと数ヶ月〜数年単位で飛ぶけど、話を聞いていればちゃんと追えるところが良くできていると思った。
序盤の「警戒(空襲)警報が鳴ってるから〜」云々の話をしている次のシーンでは進駐軍が入ってきてるんだもんなあw
そこで、ああそういう時間の描き方をする映画か、とハッキリ分かるわけですが。
とかくこの作品は人間の劣等感の苦しみを描いていく様は観ていて苦しい、苦しいけど見応えは凄くあった。
救いがないと言ったらそうかもしれないけど、やはり人間の心理を追っていく話はこちらにも迫ってくるモノがあるね。
個人的には、あの母親の元では真面目な人間ほど鬱屈してしまうだろうなあと主人公に同情…。
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