シネつう!
JAPAN STYLE !!

おくりびと
2008年制作

満足度:

チェリストとしての職を失った主人公。
田舎に帰った彼は意図せず納棺師として第2の人生をスタートすることになる。

こういった職業をことさら意識したことはなかったけど、誰かがやっていること。
それを改めて教えてくれるだけでなく、一人の青年のドラマとして見せてくれたこの作品は、かなりグッと来ました。
妻や友人に“遺体を扱う”というイメージだけで忌み嫌われながらも、葬儀では誠実に死者を送り出すことで遺族の哀しみを和らげ感謝こそされる。
多少出来過ぎな感はあるけれど、オープニングでのつかみ(ここで笑わせるから良いんだよねw)のエピソードから、腐乱死体、壮年で亡くなった母、不良少女、幸せな老婆…といった感じの順で見せられると、その度に仕事の大変さややり甲斐のようなものが共感できる。
このあたりの構成は上手かった。

何よりも、知り合い(友人の母)の納棺を行うことで“妻や友人からの言われなき偏見を拭う”というエピソードが、展開は読めるし出来すぎだとは思いながらも感動しちゃったんですわ。
「立派な仕事なんだから見返してやれ!」ってね。
あと、銭湯の常連客を演じた笹野高史が良かった。
もうホントにやられちゃいました。
彼の役と、そして斎場での台詞にもう落涙ですよ。
なんだろうなあ、俺はこういうふうな“死生観”を扱った話には弱いわ…。

しかし主演の本木雅弘はすごい。
納棺師としての手際を体得しているようで、ボディダブルのシーンが一切無い。
元々が本木の持ち込み企画ということだけあって、彼の並々ならぬ思い入れを感じるようでした。
音は後入れだろうけど、チェロのシーンもちゃんとやってるんだよなあ。
そこも感心しました。

妻役の広末涼子はちょっと微妙。
正直なところ諄い笑顔が鼻につくw
納棺会社の社長を飄々と演じた山崎努はさすがの貫禄だけど、伊丹十三の「お葬式」で葬儀の段取りが分からず右往左往していた役を想像すると、今回はずいぶん手際の良い役で可笑しいw

この映画は色々前振りがあって、きちんとオチもそれを使ってくるところがでちゃんと纏めてあって好感を持てる。
でも石のエピソードはさらに出来すぎ感があって、ちょっとやりすぎたかなあという気もするね。
いい話なんだけど、ちょっと感動させようと狙いすぎてるよね。
もう半歩踏みとどまってくれていれば違ったんだけど…。


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