シネつう!
JAPAN STYLE !!

音楽
2020年制作

満足度:

大橋裕之の漫画を原作にしたアニメーション作品。
不良の研二はひょんな事でベースを手に入れたことで、仲間とバンドをやってみることを思いつく。

原作は未読。
キャラクターの目の描き方が個性的だけど、そういったかなりデフォルメされた顔の造形とは裏腹に、人物の動きはロトスコープでかなりリアリスティックにやっているところがギャップになっている感じ。
この融合がすごく絶妙な雰囲気を生み出していて面白かった、というかあえてこの演出を選んだセンスには脱帽です。
途中で演奏に熱が入った森田がさらに写実的になるシーンはもはやギャグだけど、キライじゃないですよ。

アニメーションになったことで成立する主人公・研二のセリフの“間”も絶妙で、やたら溜め込む場面と即答する場面のカットの勢いの差にはニヤニヤしてしまう。
序盤に仲間の2人に対してバンドをやろうと声をかける前にある長い“間”は、研二は意を決して声をかけているという表現型なんじゃないかな。
逆にバンド名とかフェスに参加するとかについての決定には全く“間”が無いので悩んでいないようにも感じるけど、その直感的というか思い切りの良さが(何を考えているかわからない表情のキャラクターにも関わらず)逆に人間的な魅力に見えてしまう仕掛け。
人間的という面では、仲間の太田がすげえ良い奴だったね。
ちょっとしたセリフからも、ちゃんと研二の事を見ていて分かっているという間柄なのが伝わりますわ。

あと、研二には終始相手にされてなかった他校の大場がいいキャラですなあ。
外野で独り相撲をしているだけにも関わらずなぜか主人公と双璧の存在感があったけど、でも声をあてたのが竹中直人でなかったら完全にモブで埋もれてた気はする。
これは良い配役だと思うね。

「音楽」というタイトル通り、題材は「音楽」。
しかしそこで描かれるのは高尚だったり学術的だったりというような話ではなく、もっと何か…音を鳴らすことによる興奮というか高揚感というか、そういったものだったように感じる。
表情の変わらない研二たちが鳴らした最初のセッションの曲は、まさしく「音楽」それそのものだった。
森田が「これは原初のロック!」と衝撃を受けるのも納得です。

終盤はフェスのシーンでその高揚感は頂点に。
しかし研二のリコーダーのテクニックは一体どこから来たんだ?
夜な夜な吹いてたと思われるシーンもあったけど、独学であの超絶演奏なのか?w
まあ観ている側はその勢いに飲まれるのですが。

正直言うとクセが強いので観る人を選ぶ作品だとは思うんだけど、俺はかなり好きですね。
終始ニヤニヤが止まらなかったし。


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