9
フーテンの寅さんが巻き起こす騒動を描いた人情喜劇シリーズの第11弾。
本作のマドンナは浅丘ルリ子演じる松岡リリー。
寅さんと相思相愛のキャラとしてこの後何度か再登場するマドンナだが、本作が初登場。
堅気ではない二人、網走で出会い、どこか惹かれ合うという空気感が見て取れる演出が良いなあ。
私たちの生き方は「あぶくみたいなもの」というセリフへの共感性。
今観るとシリーズの最後まで結婚することはなかったと知っているだけに、少し胸のあたりが苦しくなるが、この映画が作られた時はシリーズのマドンナの一人でしかない。
でも寅さんとリリーは観ていて素直に応援したくなってしまうね。
“とらや”での騒動は相変わらずの偉大なるマンネリズム。
「寅、お前が言うな」と観ている側が内心思うような台詞回しが絶妙で面白い。
他人の恋(特に裏の工場連中)には無神経なのに、こと自分の事になるとドギマギするのもいつものお約束。
でも酔ったリリーが夜に訪ねてきた時の寅さんの対応はちょっと大人な感じもしたかな。
飛び出していったリリーを追いかけなかったのは、この時点で寅さんとリリーをくっつけるわけにはいかないという部分もあるのだろうが、そこが良くもあり、残念でもある。
序盤に「あぶく」というセリフに触発されて北海道で酪農一家のお世話になるあたりが寅さん的展開で面白いが、顛末を酪農家からの手紙でテンポよく見せたりするあたりは上手い。
酪農家からの手紙を読んだ博が「なんだかよく分からないけれど、この人が迷惑していることは事実らしいな」と言うのが可笑しくて可笑しくてw
すぐにさくらが連れ戻しに行くわけだが、当時の汽車で東京〜網走って何時間かかるんだ?
全くはた迷惑な兄貴だよねえ。
次のシーンでは柴又に連れ戻された寅さんのカットになるわけで、この時点では「これじゃ北海道に行って帰ってきただけじゃないか?」と、ちょっと無理やりさを感じたものの、その後のさくらのお礼への返信、そしてエンディングで寅さんがまた行くあたりで「ああ繰り返しギャグか」と理解した。
それにしても迷惑かけてばかりの寅さんをちゃんと受け入れる酪農一家、良い人たちだw
もどる(「男はつらいよ」シリーズ)
もどる(ア行)
当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01