シネつう!
JAPAN STYLE !!

男はつらいよ
寅次郎頑張れ!
1977年制作

満足度:

フーテンの寅さんが巻き起こす騒動を描いた人情喜劇シリーズの第20弾。

タイトルは「寅次郎頑張れ!」だが、内容はとらやに下宿している良介という青年(中村雅俊)の恋を応援する話がメインテーマ。
どちらかというと寅さんの恋自体は添え物だけど、とらやの場面も長崎の場面も本作のテーマから逸れずに上手くまとまっていて良い感じ。
やや奥手な青年の恋にお節介をする寅さんが、デートプランから「アイラブユー」を伝えるタイミングまで指南するあたりは可笑しいw
ただただ居間で寅さんが妄想を語っているだけなのに、失恋ばかりしている寅さんだからこそ「お前にそれが言えるのかよ」という構造が成立していて、キャラクター性・台詞回し・展開のテンポと相まって面白さが増幅される。
様式美そのものだけど、作り手にも観客にも“寅さん”というキャラクターに信頼関係があってこそのものだよね。

最後の最後で一歩を踏み出せない青年は、意を決して告白したタイミングが最悪だったせいか「失恋した」と思い込んでガス自殺を図ってしまう。
この展開はちょっとギョッとしたけど、実際に1970年代はガス自殺も多かったらしいので、そういう意味でも世相というか時代を反映した描写なのかもしれない。
ただ、そのあとタバコに火をつけようとしてガス爆発というオチは、なんだか「男はつらいよ」にしてはコント性が強くてちょっと違和感はあったかな。
まあ湿っぽいのを吹き飛ばすのには悪くはないが。

青年の恋の相手である食堂で働く幸子を演じるのは大竹しのぶ。
本作で寅さんが恋をするのは青年の姉(藤村志保)の方なので、幸子はマドンナではないけれどストーリー的には中心にいる女性ですね。
当時20歳の大竹しのぶの演技は、幸子というキャラの純朴さが上手く出されていて良い感じだった。

失恋で青年が帰った先の地方は長崎の平戸。
俺自身も平戸には一度2010年代に行ったことがあったけど、さらにその30数年前の風景とはいえ、幸橋や教会などは自分も見た景色が映っていたのはなんだか感慨深いものがあった。
こういう日本のその時の風景が記録されているのも「男はつらいよ」の良いところですね。


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