シネつう!
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男はつらいよ
お帰り 寅さん
2019年制作

満足度:

1作目の「男はつらいよ」が公開されてから50周年となった2019年に公開されたシリーズ50作目。
前作の第49作(特別篇)から22年後、小説家となった満男はかつての恋人のこと、そして伯父のことを思い出す。

50周年で50作目。
山田洋次監督にとってもかつてライフワークとなっていたシリーズであり、この節目で再び新作映画という形にしたこと自体に意味がある作品だと思う。
確かに内容的には総集編や同窓会映画の域を超えてはいないと思うけれど、10年やそこらのシリーズならいざ知らず、やはり「男はつらいよ」の50年となると歴史の重みが違うわ。

現時点で俺がちゃんと鑑賞したのはシリーズの14作目までなのだけど、以降の作品については子供時分にうちの親父がよくTVで観ていたのを端から眺めていた記憶はあるので、満男役の吉岡秀隆や泉役の後藤久美子が出ていたことは…知っている。
逆に言えばその程度の者なので、俺のような若輩がこの長いシリーズを振り返る作品をどうこう言うのは少し恐れ多いところもあるのだけど(苦笑)
でも素直に、登場人物たちが寅さんとの思い出を振り返る様子を通じて、観客であるこちら側もかつて在った渥美清という役者の偉大さをひしひしと感じられるのです。
車寅次郎と渥美清はもはや不可分の存在であるし、「寅さん」という一個の人格はすでに架空の人物を超えた存在感を発揮していると思う。
それは本当に凄いことだな。

前述のとおり作品としては同窓会映画的で、現代と回想が半々くらいの過去の名場面からのパッチワークで構成された内容。
人情喜劇としての「男はつらいよ」らしさはほぼ回想シーンに頼っていて、現代編は(あたりまえだけど)今の山田洋次作品っぽい感じ。
例えば家族観や老人問題の描き方がちょっとシリアスというか…。
脇役の小林稔侍や橋爪功、立川志らくという顔ぶれも今の山田組って感じだねえ。

それはそれとしても、同じ監督と同じ役者で22年後に22年後の話を撮るなんてのは…そうそうできることじゃない。
それをやってしまうというのも、やはりこのシリーズが愛されているからなのだと思うし、同時に作品の中でキャラクターが生きて年齢を重ねていることに説得力があるからだろうけども。
特に本作では後藤久美子を同じ役で役者に復帰させたのがデカいなあ。
彼女は役者をやめてから23年経っているのに、それでも復帰を決意させるんだから監督もすごいw
まあ正直言うと彼女の演技自体にはブランクの影響を感じさせるものはあるのですが、本人が同じ役で出ていること自体に意味があるので、これはこれでいいのです。

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