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TYPE-MOONのゲーム「Fate/stay night」から"桜ルート"と呼ばれる展開をアニメ化した劇場版3部作の3作目。
"桜ルートの完結編にして、足掛け15年かかって制作された「Fate/stay night」のアニメ化における全エピソードの完結編。
自分がTYPE-MOONと奈須きのこが世に出したこの世界観に触れたのは「劇場版 空の境界」が最初で、そこからFate/stay night」の方も観るようになったので10年と少し前から観始めたことになるか。
すでに話を知っているであろうゲームファンからすれば、ついに全エピソードが映像化されたという感慨があるだろうし、俺の様にアニメ版しか観ていない者にとっても「Fate/stay night」が描いた3つの物語をついに見ることができたことの感慨もある。
ゲームならではの平行した3つの物語と、それぞれに存在する真エンドという構成をもって「Fate/stay night」の世界観は完成をみるという意味では、それを全て映像として作り切ってくれたことに感謝したい。
特にufotableが制作したクオリティの高い映像は素晴らしかった。
「劇場版 空の境界」から本作に至るまで、TYPE-MOON作品の映像化に対する一貫した姿勢というか、世界観の表現に対するブレがないのが素晴らしい。
もちろんTVアニメと劇場版では動かし方や見せ方に差をつけなければならないところはあるわけだけれど、それを踏まえても作品世界をきちんととらえて雰囲気を壊さないその姿勢は、作り手がこの作品を好きなのだろうなという事が伝わってきて良いと思う。
そう思うのは、本作を単純なファンムービーにせずちゃんと物語として表現しようとしていると感じられる点。
前作までで退場したサーバントやマスターも多いので、人気の高いキャラであれば「最終作だから」と回想などで安易に再登場させたりすることもやろうと思えばできるわけだけど、そうはしない。
「そんなお祭り映画みたいなものをファンは求めていない」と理解しているからこそ、ここまでストイックに“3部作でひとつの物語”として話に集中して描き切っているんだろう。
作品の姿勢がストイックであるがゆえに、この世界観を知らない者やシリーズを観ていない者にとってはとても不親切な内容ともいえる。
というかファン以外は絶対に内容についてこれないw
でもそれは作り手がファンを信じていることの裏返しでもあるわけで、本作の場合はそれが感じられるのもいいのだ。
ファンに支えられ、作り手もファンを信じ、お互いに好きな作品に向き合ったことで映像化は完結されたという意味で、「Fate/stay night」というゲームはとても幸せな作品だと思う。
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