7
渋谷の裏にある別世界、バケモノ達が暮らす渋天街に迷い込んだ人間の少年。豪快で不器用だが親父の様なバケモノ・熊徹に弟子入りしたその少年・九太の成長を描く。
バケモノのキャラクターは面白い。
世界観も良いと思う。
だけど監督は成長を描くことを生真面目にとらえているのかなあ…、前半9歳の九太の物語と、後半17歳の九太の物語とでどうもテイストが分断されているような気がして。
観ていてまず思ったのは、誰目線で誰の物語なのか、ということ。
冒頭、二人の声の説明で世界観が示される。
周囲のバケモノ達からも信頼の厚い猪王山と、粗暴で豪快な熊徹が、神に転生する現・宗師の跡目を競っている…。
「ほほう、ということは熊徹の物語か」というと一義的にはそうだけれど、実際は九太の物語なわけで、父親不在の主人公にとっての疑似親子の時間が流れていく。
この前半部分は感情移入しやすいし観ていて楽しい。
ところが後半、成長してしまうと今度は人間界との行き来をするし、そこで出会った同じ年頃の少女と交流をする青春ドラマに。
(大学受験を目指すというところにも、人間世界で生きるには…という監督の生真面目さを感じる。)
少年目線から青年目線に変わり、そして自分の人生の目的を見つけていく様を観て、「バケモノの世界は子供向けみたいなのに、実際この映画のターゲットは子供じゃないなあ」と思った。(高校〜大学生くらいから上?)
さりとて親目線の話でもなく、あくまで九太が熊徹の背中を見て育った話。
なのに後半でいきなり渋谷に戻った九太が、それこそいきなり図書館で本を手に取り「勉強したい!」と思う感情に至るのは…どうも流れが分断しているように思えて仕方がない。
それだと熊徹の何を見て育ったのかがイマイチ釈然としないというか。
単純な知的好奇心もあるだろうけど、また手に取るのが「白鯨」というところが伏線にする気満々で。
(一郎彦って鯨の形を知っていたのか…。)
ラストは人間界に帰っていくというのも、個人的には意外だったが。
まあそんなわけで後半の流れはちょっと思うところはある。
個人的にはもっとバケモノの街での物語に終始してほしかったのも正直なところ。
せっかくバケモノ達は魅力的なキャラクターをしているのだし、個々の活躍ももっと観たかったなあ。
もどる(ハ行)
当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01