シネつう!
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はたらく細胞
2024年制作

満足度:

清水茜原作の同名漫画の実写版。
ある親子の体内で繰り広げられる細胞たちの活動を擬人化して描いたコメディドラマ。

原作は未読だけどTVアニメは観てました。
その感覚だと「実写化は無茶では?」と思ったのだけど、実際に本作を観てみるとキレイに一本の映画としてまとめていて、話の作り方が上手かったなと感心した次第。
特に原作・TVアニメでは描かれなかった、「細胞たちが生きているこの体の持ち主はだれか」の部分を描いたオリジナルの展開に工夫を感じるところです。
「ドジな赤血球の成長」だけを描くよりも話に深みが出るし、そもそも「何が起きて細胞たちのいる世界にこんなことが起きているのか」の説明にもなっているのが上手いなあと。
基本的に原作・TVアニメベースの構成は1〜2話完結のショートなので、それをなぞるだけだと2時間の間で話が断片化してしまうけど、本作はこの人間パートの親子ドラマを入れたことが話の縦軸になって話に引き込む力を強化しているよね。
漫画やTVアニメという短めの媒体、それとは違う映画という眺めの媒体、それぞれに合ったフォーマットがあると思うけど、本作はそこをしっかり差別化して"映画にあったフォーマット"にしたことが成功につながっているように思います。

細胞たちの世界はファンタジー。
擬人化された個々の細胞の役割を面白くわかりやすく描いているところが本作の魅力。
その点では原作のイメージそのままにコスプレ感も強めな印象だけど、あえてそこで振り切ってファンタジーのままにしているところが良かった。
あとは細胞たちの数の描写だよね。
37兆個という数の細胞が活動しているというイメージを伝えるための、引きの画に映る細胞たちの密度がとにかく高い。
とにかくこのはたらく細胞の数が世界観の説得力だな。
エキストラの正しい使い方ですねw(さすがにCGの水増しも使っているんだろうけど。)

一方で人間パートはリアル寄りの地に足着いた(分かりやすい)親子のドラマになっているかな。
親父さんの体の中がスピンオフ漫画の方の「はたらく細胞BLACK」の世界になっているのがちょっとしたサプライズだったけど、これはこれで「BLACK」も観ていた身としては面白いねw

最初は不摂生な父親が色々病気をするのかと思ったら、まさかの健康そうな娘さんの方が大病(白血病)を患うとは思わなかった。
鑑賞前はコメディだけで話が進むのかと予想していたのに、後半は一転してシリアスな展開なんだもんなあ。
このあたりはある意味ベタな要素もあったかもしれないけど、阿部サダヲと芦田愛菜が上手いのでとても良かったですよ。
放射線治療で体内の細胞を消してしまうという展開にもちょっと驚いた。
細胞側のメインキャラが全部消えてしまうので、連続モノを描くならなかなかの禁じ手のような気もするけど、これが出来るのも一話完結の映画というフォーマットの強みだろう。

体を構成する細胞は、日々生まれて死にながら人間の体を守り・構築している。
そういう意味ではメインだと思っていた細胞キャラクターたちが退場して、また新たな細胞が体のために働いているという描き方も「はたらく細胞」としては正しい見せ方だと思う。
原作の魅力を換骨奪胎して、実写版として上手く2時間フォーマットに落とし込んだ構成はお見事でしたね。


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