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米国の水爆実験によって深海から呼び起こされた大怪獣。
伝説にちなみ“ゴジラ”と名付けられた怪獣は、東京に上陸しその都市を火の海に変える。
日本を代表する怪獣・ゴジラの初作品であるけど、当時の水爆実験に対する怒りや、戦後まだ9年という時の忘れ得ない戦災の記憶といった社会派なテーマが際立っている作品。
怪獣が暴れ回ることは、娯楽性のそれではなく、人間にはどうにもならないものの比喩としての恐怖や不安が感じられるし、間違いなくこの映画は原爆を落とされて戦争に負けた日本にしか作り得なかっただろうと思う。
この時代、日本国内には何もノウハウのなかった“怪獣映画”制作を、一から始めて初作品にしてこのレベルに達した制作陣には敬服するほかないです。
この作品では人間はゴジラによる被害者であると同時に、ゴジラへの加害者でもあった。
水爆で勝手に呼び起こしておきながら、被害が出たので新兵器で抹殺するという身勝手な論理。
そして水中酸素破壊剤“オキシジェンデストロイヤー”を作った芹澤博士は、それが原水爆に匹敵する悪魔の兵器だと苦悩し非公表を決意する。
しかし、ゴジラを倒し人々を救うにはそれを使うしかないというジレンマ。
かくも矛盾した話を見せられると、なんだか人間という存在が哀しくなってくるねえ。
逆に、話にリアルさを出そうとしてジュラ紀の生物に言及したりするシーンで、年代考証が間違っていたりする部分もあるんだけど…、まあこれはテーマの本質ではないので目をつぶりますか。
特撮のレベルは最初期と考えればかなりの高水準だけど、今の目で見れば色々とオモチャに見える部分も多い。
(それが味ではあるが。)
場面によってゴジラのスケール感も若干変わるし、特に戦闘機のミサイルはガイドのピアノ線が見えていて、そのミサイルが空(書き割り)に当たって下に落ちるという始末。
今ならOKテイクにはならんだろうw
でも熔ける鉄柱の描写や、手前の人間と遠景のゴジラの合成、巨大感を出すためのハイスピード撮影の効果などは抜群でした。
この後に半世紀もシリーズ化する作品の原点を思えば、やはりこれは死ぬまでに観るべき作品の一つと言っても過言ではないでしょう。
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