森の中で見つけた不思議な花“夜間飛行”。
その花によって魔法の力を得た少女メアリは、空飛ぶ箒によって魔女の学校にたどり着くが…。
米林宏昌監督によるスタジオポノックの第一回長編作品。

まず「『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』の米林宏昌監督作品」という枕詞が付いた上で、隠そうともしないし隠す必要もないけれど、明らかにジブリの系譜とわかるキャラデザインに背景美術。
スタジオジブリが制作部門を廃止したことから分家のような形で設立されたスタジオポノックの作品なので、それも当たり前と言えばそうなのだが、これだと米林監督は生真面目に“ジブリっぽい何か”を作っただけになってしまうのでは。
個人的にはせっかく新スタジオとして立ち上げたのだから、もっとジブリとは違うものを観たかった気もするのだけれど。

もちろん、かつての師匠筋に対して意識的にオマージュを捧げている可能性もある。
でもそれにしたって「となりのトトロ」「天空の城ラピュタ」「魔女の宅急便」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」…と思い当たるようなエッセンスを入れ込めばいいというわけではないよなあ。
あれだけ「赤毛が…」と言われたら、ジブリではないけれど高畑勲の「赤毛のアン」を思い出さずにはいられないし。
パロディだとは思わないにしても、ちょっとオマージュが多くて気になった。
それが故に、結局最後まで観てもそういった“それっぽい何か”から一歩先に抜け出すところまでは感じられなかったのが残念。
米林監督は自分の作家性を出すよりも前に、内側から外側（この場合は外的な要求・プレッシャー）から宮崎駿という巨大な存在に飲まれてしまっているのでは…。

とはいえ単体のファンタジーとして観れば、それなりに魅力はある。
魔法で空を飛ぶという情景はやはりワクワクするものだし、個々はジブリ的な絵の美しさも実に効果的。
ストーリー展開も、特に冒頭の流れはよく出来ていて、事情が分からないなりにツカミとして機能しているアバンからメアリの状況説明までの手際が良い。
転居で田舎に両親よりも先に来たが、友人もまだできていないことや、色々と手伝って周囲に承認されたいが図らずもドジっ子なので失敗ばかり…と性格も１つのシークエンスでよく分かるもんね。

が、魔女の大学に迷い込むあたりからはちょっと微妙。
普通は異世界の緊張感でもっと面白くなりそうなものなのに、どうも学校のシーンは説明臭すぎて魅力が薄いというか。
地下研究室への振りのためだとしても、メインストーリーにほとんど関係のない授業のシーンで時間を費やしているのが気になったし、あれだけ学生が映っていてもモブがモブでしかないというか…生気を感じないのもちょっと怖かったな。
結局学校側の登場人物が３人しかいないも同然になってしまって、話がどうもせせこましく感じた。

あと、キャラデザに声…合ってますかね？
メアリの杉咲花とピーターの神木隆之介は良いとして、その他のキャラ、特にドクター・デイ（小日向文世）、ゼベディ（遠藤憲一）、フラナガン（佐藤二朗）は…。
もちろん演技が下手というわけではないですよ、皆さん達者な人ばかりだし。
でもキャラデザから想像する声と合っているのかなあ、という話。
あ、お手伝いのバンクスさん（渡辺えり）はバッチリでした。

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