シネつう!
JAPAN STYLE !!

マスカレード・ホテル
2019年制作

満足度:

東野圭吾の同名小説の実写化作品。
東京の一流ホテルを舞台に、犯行予告された連続殺人の犯人に迫るべくホテルマンとして潜入した刑事・新田と、彼の教育係となったフロントクラーク・山岸の姿を描く。

構造的には割とベタなバディものだけど、刑事もホテルマンもそれぞれにプロとして行動していて観ていて気持ちいい。
意味不明な行動で足を引っ張る役がいないだけでも、物語がスッキリしてるよねw
冒頭で視線も合わずそれぞれ背後に立っていただけの二人が、最後には同じテーブルで向かい合って座るという構図も、彼らの相互理解を感じさせる見せ方で上手く纏まっている。
主演の二人(木村拓哉・長澤まさみ)はキャラに合っていて良かったし、新田と山岸が今のところプロとしてお互いにストイックな関係性なのが、個人的には好みな感じです。

ミステリーとしても小気味良いテンポで展開し、このホテルが舞台になった経緯から主人公二人の人となりまで一気に分からせる導入部分は手際が良いと思う。
全体的なトリックとしては「ABC殺人事件」っぽい要素を感じるものの、もう一ひねりとして手間のかかる客を次から次に登場させて犯人をその中に隠してしまうという手法を取っていて、なかなかうまく考えられていて楽しめました。
それというのもその目に付く客がみんな名のある役者ばっかりだもんねえ。
“木を隠すには森の中”とでもいうか…、「ちょっとしか出てこない客役に有名な人を使ってるんだから、怪しくないわけがない」という心理を逆手に取っているとも言える。
ある意味で贅沢な作品だなあ、と。

終盤、新田が犯人に気づくもののホテルどの部屋が現場か特定できないくだりがあって、その状況を作るために、犯人が中盤に言っていた「今度、夫の仲間の集まりがあって…」という偽装工作もちゃんと伏線だった…というあたりには感心した。
山岸が部屋に犯人が隠れていることに気づいたのは、きっちりと置かれているはずの部屋の文鎮が動かされていたからだが、この文鎮は中盤でもこれ見よがしに映されるので、ああこりゃ後々伏線になるなーとは早い段階で分かる。 だけど、それを特にセリフでそれを説明しなかったことは、分かりやすさ優先のエンタメ系邦画にあっては抑えた方かな?
見せ方としてはクドかったけど、これ見よがしな説明までしなかったことは好感が持てます。

犯人の動機に若干情状酌量の余地を感じてしまうのはいかにも東野圭吾的な物語だけど、総じていい感じのエンタメ系ミステリー映画だったと思う。
“ホテルの客は仮面をかぶっている”というのが本作のテーマの一つでもあるけれど、そこの表現に役者という他者を演じる本職の本領が発揮されているようにも思えて面白かったですよ。
まあ犯人役のあの役者の力が大きいよなあ、やっぱりいい役者だわ。


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