シネつう!
JAPAN STYLE !!

マイマイ新子と千年の魔法
2009年制作

満足度:

高樹のぶ子の小説を原作にしたアニメーション作品。
昭和30年代の山口県防府市を舞台に、空想好きで活発な小学生・新子と東京から転校してきた貴伊子の交流を描く。

子供の感性が丁寧に描かれていて良い作品だとは思う。
ただ、取り立ててドラマの山谷を強調をせず日常の世界を切り取った感じで進むので、そこがこの作品の味でもあるとは思うものの…淡白な印象を受ける部分でもあった。
バー・カリフォルニアの場面はちょっと無茶だとも思ったが、子供らしい向こう見ずさなんだということにして…あそこが一番の山場かな?w
ヤクザの人たちが悪人ではなくて良かった。

描かれる空想も、友達との遊びも、出会いも別れも日常の一部。
「また明日も遊ぼうや」というセリフが、彼女たちの永遠ではない子供時代の中でかけがえのない日々が迎えられる事を期待させて、少し心を締め付けられる。

舞台だけを見ると、同じように子供と昭和30年代を描いた「となりのトトロ」とついつい比較してしまうけど、あちらは子供にしか見えない“トトロ”を確信的に存在するものとして描いているのに対し、この作品は子供の空想は空想として彼女たちの世界の一部を担っているという描写。
感じるノスタルジーには近いものがある一方で、ちょっとベクトルの違う子供の世界だよね。
子供の感性の中で閉じた世界というか、空想を描いていてもファンタジーではなく非常にリアリスティックだとも感じた。

ただ、現実と空想との境(特に平安時代の清原諾子とのつながり)が少々分断されているように感じるのはもったいない。
現代と平安のリンクで花や赤い紙を使ってはいるものの、新子の行動と清原諾子の行動がダイレクトにつながっているわけではないし、どちらかというと貴伊子にリンクしているのだけど、終盤までその辺がちょっと弱いというか…。
話が行ったり来たりする印象のほうが強くなってしまって、個人的にはちょっと微妙だった。

とはいえ、昭和30年代の雰囲気や、子供たちの感性が活写された世界に心地よさを感じるのも事実。
ドラマ的にはもう少しおじいさんと新子の繋がりが目に見えていれば…と思う部分もあるけれど、最後の一連の別れにしてもすごくサラッとしているし、描きたいのはそういったドラマではなく「子供の感性とその世界」ということなんだろうと思う次第。


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