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司馬遼太郎の同名小説の映画化作品。
武蔵国でバラガキ(乱暴者)と呼ばれた若者が、新選組の"鬼の副長"として時代を駆け抜けていった姿を描く。
武士になるという夢を追って、剣に生き、戦いに死んだ最後の侍…土方歳三。
その生き様の格好良さに惹かれてしまうのは司馬遼太郎が描いた“土方像”が魅力的だからに他ならないけれど、激動の時代を生きた実在の人物として、日本人の判官贔屓的な部分に突き刺さる人生だったのも間違いない。
この映画はそんな土方の生き様を要所要所の出来事を拾いながらうまくまとめていると思うし、土方を演じた岡田准一や、近藤勇役の鈴木亮平、沖田総司役の山田涼介など、イメージにハマった絶妙な配役も見事だったと思う。
原田眞人監督らしいケレン味も、この時代の激動感を表現するのにうまくマッチしていたよね。
どうしても池田屋事件がピークという印象はあるので終盤に駆け足感があるのは仕方がないけれど、全体的な時代劇大作の雰囲気も相まって見応えのある作品になっていました。
話の描き方としては状況説明もそこそこに有名なエピソードが次から次へと登場してくる感じで、土方の見てきたものをダイジェストで追っている感じは強いかな。
ある人物の人生を描くにしても、土方のエピソードを詰め込むだけ詰め込んだら2時間半の尺があってもこの様になってしまうのは仕方がないのだろう。
しかしこのスピード感は「新選組の物語は当然知っているだろうから特に説明しないけどついてこれるよね?」という作り手の観客に対する挑戦(信頼?)なんだろうか?w
基本的な用語・言い回しや幕末の勢力・情勢・人物関係といった部分についても、一言二言台詞で触れる以外にこれ見よがしな解説は殆どなかったようにも思うなあ。
まあ俺自身はそういうストイックな姿勢は好みだけども。
一方で描き方としてはやっぱり土方の主観なので会津には同情的だし、徳川慶喜は大政奉還にしても鳥羽・伏見の戦いでの逃亡にしてもやけに否定的なイメージで描かれている感じ。
こういう部分は史実と物語を自覚的に分けて描いているのは間違いない。
徳川慶喜が主人公になれば見方は変わるし維新志士が主人公になればまた見方も変わるものなんだけど、これは「燃えよ剣」なので土方の感情に沿えばこういう描き方になるというのが歴史モノの面白いところだな。
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