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父親が事故で亡くなり、母親とその実家である瀬戸内の島に引っ越してきた少女。
その島で出会った3匹の妖怪と、彼女との交流を描いた沖浦啓之監督のファンタジーアニメ。
沖浦監督はやはりドラマの撮れる監督だった。
前作の「人狼」はハードな内容だったけど、今回は少女の成長を描いた心温まるファンタジー。
"島での新しい生活"、"自分にしか見えない妖怪"、"ちょっとした事件"と話の要素ごとには目新しいものはないけど、人物や状況を丁寧に積み上げて描くので非常に心に響く話になってました。
舞台や妖怪からのイメージは「かみちゅ」を思い出させるけど、こちらはもう少しリアル寄りなドラマかな。
小道具の通行証はあまり後半に生かされなかったけど、キーアイテムである"ももへの手紙"は非常に上手く効いている。
それを主軸にした脚本も最後までブレないし、鑑賞後感は非常にさわやかな感動でした。
使い古されたプロットでも、脚本がしっかりしていれば人は感動させられるんですね。
良く言えば「王道」ってやつですね。
そういう積み上げに貢献しているのは、もちろん脚本がしっかり練ってあることが第一だけど、日常描写のリアルさがそれを補完します。
キャラクターのちょっとした所作に至るまで「ああこういう動作するよね」という演出がニクいw
扇風機とか、寝ながら畳の上を擦って進むとか、わざわざそういう行動を描いてる。
それによって生活感を無意識に感じさせるレベルにまで引き上げているけど、さらに人の重心に至るまで考え抜いて動画は描かれてるんだよなあ、これ。
そこまでリアルにするならもう実写で良いじゃないか…、というのとはまた違う。
妖怪という非日常と、少女の日常世界との融合はこういったアニメーションにしかできないと思うんだよね。
美しい風景や周囲の人々も含め、妖怪も一つの世界観としてそこに成立させるという…、それがアニメの魅力なんだと改めて感じさせられる作品でした。
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